等高線と連続関数
この文章では等高線という特定の条件を充たす開集合もしくは閉集合からなる族を定義し、それに付随する連続関数の存在を示す。この議論の応用として正規空間に於けるウリゾーンの補題、ティーチェの拡張定理を示す。 ティーチェの拡張定理はウリゾーンの補題から、一様収束する関数の列を構成して証明する方法が一般的だが、 ティーチェの拡張定理も、ウリゾーンの補題の証明のように、等高線の方法で証明できる。 この文章では正規空間という語をを仮定しない意味で用いる。また、等高線という語はこの文章で暫定的に定義したもので、他の数学の文章において一般的に用いられるものでは全くない。
1 等高線
定義 1 (上半連続、下半連続).
位相空間に対しその閉集合族をと書こう。 とする。 このとき写像 が上半連続とは
を充すこととし、 また、が下半連続とは
を充すこと と定義する。
明らかに上半連続かつ下半連続な関数は連続であり、連続な関数は上かつ下半連続である。もちろんには標準的な位相を入れてその意味で連続と言っているのである。
補題 2.
,をそれぞれ位相空間の閉集合、開集合とする。 この時、特性関数
はそれぞれ上半連続、下半連続である。
証明.
特性関数はかしか値を取らないので証明は簡単である。 ∎
定理 3 (半連続関数の上限と下限).
を上半連続(下半連続)な写像の族とする。 このとき、()も上半連続(下半連続)
証明.
任意のについて
が成り立つので
となり、が閉集合であることがわかるので は上半連続である。下半連続の場合も同様である。 ∎
定義 4 (開等高線).
位相空間の開集合からなる部分集合族がの開等高線であるとは、添字集合がの稠密部分集合であり、更にについて
を充たすことである。
としては、よく内の有限桁の二進数全体が採用される。
定理 5.
位相空間の等高線に対して を添え字とする二つの集合族を
と定義し、
と定義するとであり、これはからへの連続関数になる。
証明.
主張.
| (1) | |||
| (2) | |||
| (3) | |||
| (4) |
が成り立つ。
[主張の証明]
について、ならなのでの定義から明らかにが成り立つ。
について、の性質
よりを仮定するととなるについて
となる。つまり
が成り立つ。ところで逆にとなるについては定義から明らかに
が成り立ち、いづれにせよ結局
が成り立ち、の定義からを得る。
について、ならばなのでの定義から明らかに
について、の性質
よりを仮定するとき、となるについて
となる。つまり
が成り立つ。ところで逆にとなるについてはの定義から明らかに
が成り立ち、いづれにせよ結局
が成り立つ。 よっての定義からを得る。
[主張の証明終わり]
上で示した主張の対偶をとり
| (5) | |||
| (6) | |||
| (7) | |||
| (8) |
を得る。これを使ってを示そう。
もしある点でならがで稠密なことから
となるが存在し上のとからかつが成り立ってしまい矛盾する。
もしある点でならがで稠密なことから
となるが存在し上のとからを得て、とから を得るが、なので矛盾する。
以上の議論から任意の点で、つまりであり 、はで上半連続かつ下半連続なのでで連続である。 ∎
開等高線以外にも色んな種類の等高線が考えられ、それぞれに応じた連続関数の存在が言える。しかし結局は開等高線に帰結出来るし、面倒なので開等高線に帰結出来ることを説明して連続関数の存在については定理や命題としては述べないが、後々の応用で用いる。
定義 6 (逆向き開等高線).
位相空間の開集合からなる部分集合族がの逆向き開等高線であるとは添字集合がの稠密部分集合であり、更にについて
を充たすことである。
と定義するとは上半連続であり、は下半連続で、
と定義するとであり、これはからへの連続関数になる。 逆向き開等高線についてはとして、 についてと置けばは開等高線になる。 に付随するとの関係があることを見ればのこの性質は定理5からよくわかる。
定義 7 (閉等高線).
位相空間の閉集合からなる部分集合族がの閉等高線であるとは添字集合がの稠密部分集合であり、更にについて
を充たすことである。つまりはの閉近傍である。
閉等高線に対しては
と定義するとは上半連続で、は下半連続であり、
と定義するとであり、これはからへの連続関数になる。 は逆向きの開等高線であり、この等高線に付随する定義6のについての関係があることからのこの性質は簡単にわかる。
定義 8 (逆向き閉等高線).
位相空間の開集合からなる部分集合族がの逆向き等閉高線であるとは添字集合がの稠密部分集合であり、更にについて
を充たすことである。つまりはの閉近傍である。
と定義するとは上半連続で、は下半連続であり、
と定義するとであり、これはからへの連続関数になる。 逆向きの閉等高線に対しては、として、についてと置けばは閉等高線になる。 この等高線に付随する定義7のについての関係があることを見ればこのの性質は簡単にわかる。
2 応用
定理 9 (ウリゾーンの補題).
を正規空間とし、をその互いに素な2つの閉集合とすると連続関数が存在し
を充す。 つまり互いに素な2つの閉集合は関数で分離できる。
証明.
をの交わらない2つの閉集合の任意の組とする。 ウリゾーンの補題を示すにはまず、
を充たす開等高線の存在を示そう。
まずと正規性から
となるが存在する。このような開集合のひとつとをそれぞれとする。
そして再び正規性を用いて
となるのひとつをとして採用する。
さらにを正規性から存在が保証される
となるのひとつをと定義し、
となるのひとつをとして定義する。・・・ということを繰り返し開集合の族が出来あがる。
この証明で十分な人はこれで証明が終わるが、より正確には
対する帰納法と選択公理を用いる。上で述べた方法を細かく正当化するだけだが、一応せっかくなので証明を付ける。それに当たり次の形の選択公理を使おう。
選択公理:
非空な集合を要素に持つ空でない集合族に対し、あるが存在して
を充たす。
さて、と定義し、に対し、
と定義すると正規性からがわかる。
そして集合族
に対し選択公理を用いて、先の選択の条件を満たす集合を得る。
簡単のためと書くことにする。このを用いて
を充たすを帰納的に構成していく。
の時、であるが、これに対して正規性から
となるが存在するのでこのような開集合のひとつをと定義し、とする。この時もちろん
が成り立つ
そして
を充たすがまで 定義されとしてに対して構成する。 の元はの形をしているので
とし、に対してはが既に定義されているのでこれをそのまま用いて、任意のに対してが定義され
を充たす。 このようにして任意のに対し が定義されを充たす。 なので、これによりが定義され
を充たす。
以下では等高線の方法を用いてティーチェの拡張定理を証明する。 以下で紹介する方法は基本的に[3]によるものだが、その証明にはギャップがある。 [2]も等高線の方法を用いており、ギャップもない。 [2]の方法で[3]の証明を修正したものを以下で展開する。 そのためにいくつか補題を用意する。
定義 10.
位相空間の2つの集合が分離的であるとは
を充たすことである。
定義 11.
位相空間の部分集合が、の集合であるとは、がの可算個の閉集合の和集合でかける時にいう。 また、の部分集合が、の集合であるとはがの可算個の開集合の共通部分で書ける時に言う。
正規空間において、ふたつの閉集合は分離できるが、一般に分離的なふたつの集合を開集合で分離することができる。この性質は見かけ上は正規性よりも強いことを主張しているが、正規性と同値である。
命題 12.
を正規空間とし、, をのふたつの集合で、分離的なものとする。このときの開集合, が存在しておよび、, を充す。
証明.
の閉集合からなるふたつの可算族, は, および
を充すとする。 開集合の可算族, を以下を充すものとする。
| (1) | |||
| (2) | |||
| (3) |
このような族の存在は、, の分離性と空間の正規性、そして帰納法によりわかる。 任意のについて、
に注意しよう。 そして、
とすると, でなので、これで命題が証明された。 ∎
ティーチェの拡張定理を等高線の概念を用いて証明するために 閉部分集合上の等高線を空間全体に拡張できることを証明する。
補題 13.
を正規空間の閉集合とし、をのに於ける開近傍とする。そしてをに於けるの閉近傍とし、と仮定する。この時のに於ける閉近傍が存在してとを充たす。
証明.
まずの正規性からの閉近傍が存在してを充たす。そして とするとはのに於ける閉近傍であるのでである。よって再び正規性からのに於ける閉近傍が存在してを充たす。からとなる。よってと置けば求める性質を全て持つ。 ∎
補題 14.
を正規空間の閉集合とし、をのに於ける開近傍とする。そしての部分集合は以下を満たすとする。
-
1.
-
2.
はのな開集合
-
3.
はのな閉集合
-
4.
とは(の中で)分離的である。
-
5.
-
6.
この時のに於ける閉近傍が存在してとおよび、を充たす。
証明.
はの閉集合なので、とはの中でもになっていることに注意しよう。 なので、とはの中で分離的なふたつの集合であることに注意しよう。 すると、命題12から、の開集合が存在して、
を充す。 特に2番目の条件から と がわかる。 また、に対して先の補題を用いて、の閉近傍で、 とを充すものが存在する。 そこでと置く。するとこれは求める条件を全て充す。 まず、がを充すの閉近傍であることは明らかである。 また、
であり、
もわかる。 ∎
定理 15 (Tietzeの拡張定理その1).
正規空間の閉集合上の任意の連続関数に対して上の連続関数が存在して
が成立する。
証明.
と置くとはで稠密である。について閉集合と開集合を
と置き、以下
| (1) | |||
| (2) | |||
| (3) |
を充たすを構成する。
まず、と置く。そしてと が既に構成されたとき、をの閉近傍で
| (1) | |||
| (2) | |||
| (3) |
を充たすものとして構成する。 そのために補題14を用いる。 まず、 である。 そして、定義からはのな開集合であり、はのな開集合である。 次にとがの分離的であることを示そう。がの閉集合であることからもそうであり、
が成り立つ。 に注意すると、同様にして
がわかる。これらのことから、とが の中で分離的であることがわかる。 定義から直ちに
がわかる。 そして、帰納法の仮定から、 なので
である。 以上から、, , , が補題14の仮定を満たすので、先に言ったの存在がわかる。 こうして閉等高線が得られた。111厳密にやりたいなら、ウリゾーンの補題の証明と同じく選択公理を適用して帰納的に構成していけば良い。このとき定義7の連続関数についてであることを示そう。
まず、
および
と定義されていてであることを思い出そう。 任意のと任意のを与え、と置く。 するとの稠密性からとなるが存在し、なので特にであり、が成り立つ。 よってが成り立つ。 の任意性からである。逆向きの不等号を示そう。を任意にあたえ再びの稠密性からとなるをとる。 すると、の定義とからであり、そしてであるからとなる。よってとなり、 となるので、の任意性からとなる。以上からについてとなるので結局
となり、は連続関数であるから定理の証明が終わる。 ∎
注意.
拡張定理に於いてのコドメインがであることは本質的ではない。の閉区間であれば常に拡張定理が成り立つ。の任意の閉区間との間に同相写像があることからこのことは明らかであろう。この事実はいかの定理でも断りなく用いられる。
定理 16 (Tietzeの拡張定理その2).
正規空間の閉集合上の任意の連続関数に対して上の連続関数が存在して
が成立する。
証明.
を同相写像とする。222同相写像ならばなんでも良い。するとはからへの連続関数だが、からへの連続関数と考える事もできる。そう考えたときに上の拡張定理を用いてのへの拡張が得られる。このときについてに注意するとについてである。よってウリゾーンの補題から連続関数が存在して
を充たす。すると連続関数と置けば333関数の各値で、の掛け算を行なっているということである。の定義からとの値を取らないのでこれは連続関数 と考える事が出来る。そしてと置けばはの拡張となっている。 ∎
3 正規性の特徴付け
定義 17.
位相空間について、, をその互いに素な任意の2つの閉集合とする このとき連続関数が存在し
を充すとき、は条件 を充すという。
定義 18.
位相空間について、任意のの閉集合と上の連続関数に対して、連続関数が存在して
を充たすときは条件を充たすという。
定義 19.
位相空間について、任意のの閉集合と上の連続関数に対して、連続関数が存在して
を充たすときは条件を充たすという。
定理 20.
位相空間について以下は同値である。
| (1) | 正規性 | ||
| (2) | 条件を充たす | ||
| (3) | 条件を充たす | ||
| (4) | 条件を充たす |
証明.
は先のセクションで示されている。
を仮定したとき互いに交わらない2つの閉集合について関数を上で、上での値を取る関数とすればこれは連続関数でを用いれば連続関数でとなる関数が得られるのでが成り立つ。
を仮定した時には上のと同じ議論だが、最後ののコドメインがか分からないが、という風に修正すればがわかる。
以上からが得られたので最後にを示せば良い
交わらない2つの閉集合についてとなる連続関数について、を考えればは互いに交わらない開集合でなので結局が成り立つ。 ∎
定義 21 (-族正規性もしくは可算族正規性).
位相空間が-族正規であるとはの閉集合からなる任意の可算で疎な族に対してとなる開集合の族が存在して
が成り立つことである。444は要請しないことにする明らかに-族正規空間は正規である。
定理 22.
位相空間に於いて正規性と-族正規性は同値
証明.
正規空間が-族正規であることを示せばいい。を閉集合からなる疎な族とする。ここで添字付についてである。
さて、
を
と定義しよう。が異なればとは交わらないのでこの定義はwell-definedであり、が疎であることからは閉集合なのでティーチェの拡張定理その2からのへの連続的な拡張が存在する。そして
と置けばでは互いに交わらないので正規空間が-族正規であることがわかる。 ∎
References
- [1] 松坂和夫,集合・位相入門,岩波書店,1968
- [2] E. Bonan, Sur un lemme adapté au théorème de Tietze-Urysohn, C. R. Acad. Sci. Paris, Ser. A., 270 (1970), 1226-1228 .
- [3] E. Ossa,A simple proof of the Tietze-Urysohn extension theorem, Arch. Math., vol.71(1998), pp331-332.
- [4] W.Rudin,Real and Complex Analysis second edition,McGraw-Hill, 1974