BNS
0 ちょっとした準備
定義 1 (擬距離).
が上の擬距離であるとは
| (1) | |||
| (2) | |||
| (3) | |||
| (4) |
が成り立つことである。ここでは任意である。非退化性
を仮定しないことに注意せよ。擬距離は非退化性を仮定するとき、距離と呼ばれる。
擬距離空間に於いて
と定義する。これをを中心とする半径の開球という。時にはによる開球であることを強調して、
と書くこともある。そして上の位相を
を開基として定義する。
命題 2.
擬距離空間についてと同じ位相を誘導する擬距離で、
を充たすものが存在する。
証明.
と置けば良い。これが擬距離の公理を充たすことの証明は、読者へ委ねる。のとき、を中心としたによる開球とによる開球は同じ集合になるのでとは同じ位相を誘導する。 ∎
定義 3 (ゲージ空間).
空間に擬距離の族が備わっている時、ををゲージとするゲージ空間という。ゲージ空間には
を準開基とした標準的な位相が定義される。ここではを中心としたはによる開球である。また上の命題からゲージ空間に対して同じ位相を誘導するゲージでの大きさがを超えないものが存在する。
次の簡単で大事な注意を刮目せよ
注意.
位相空間と上の連続関数があるとき、とを固定するとき
はの開集合であることに注意しよう。なぜならは上の連続関数で
で連続関数による開集合の引き戻しは開集合だからである。 このことは以下度々強く用いられる。これを用いると、例えば位相空間上に距離関数を定義して、さらにが上で連続であることが分かると距離空間の開集合は位相空間の開集合でもある事が分かる。
命題 4 (ゲージ空間の擬距離距離付け可能性).
ゲージ空間に於いてが高々可算のときは擬距離付け可能であり、さらに任意のについてあるが存在して
が成り立つならばは距離付け可能である。
証明.
としても良く、が高々可算なのでとしてもよい。このとき
とするとこれはどんなについても有限の値になり、この級数は一様収束するので上の連続関数である。またこれが擬距離であることを見るのは容易い。
この擬距離がゲージと同じ位相を誘導する事を見よう。はの連続関数なので擬距離空間の開球はの開集合である。よっての開集合はの開集合である。逆の事を示そう。任意の点についてならばなのでつまり、
となる。よっての開集合は開集合となるので結局は擬距離付け可能である。
最後にについてあるが存在して
が成り立つときとなるのでは距離となる。 ∎
1 本題
BNSの証明に入る前に次の少々面倒な定理を証明しよう。
補題 5 (Stoneの定理).
111この方法は参考文献[2]にはA.H.Stoneの論文[5]によるものと書いているが実際にStoneの論文を読んでみると距離空間ではなく一般に全体正規空間のパラコンパクト性を証明している。その証明を距離を用いて手直しするとこのような証明になるのである。全体正規空間とは任意の開被覆に正規被覆列が存在する空間のことであるが、正規被覆列にはそれと「両立」する距離を誘導出来ることが[5]以前にTukeyによって知られていた。Stoneも最初は距離空間でやってみてその後抽象的に全体正規性から誘導される被覆の正規列でパラコンパクト性の証明を手直ししたのかもしれない。また、参考文献[1]に於いて、距離空間のパラコンパクト性を証明する前の口上として、A.H.Stoneの証明は難しく、数多の数学者の努力によってここまで簡単になった。いまから紹介する証明はM.E.Rudinによるものである。という旨のことを述べているが、紹介された証明はA.H.Stoneによる証明であった。M.E.Rudinによる簡明で直接的な証明は[4]を参照されたし。距離空間の任意の開被覆は疎な開被覆で細分出来る。
証明.
でを中心とする開球を表すことにする。
を距離空間の開被覆とし、その添字集合は整列されているとする。これの疎な細分で開被覆となるものを構成しよう。まず各に対して
と定義する。すると
が成り立つ。また次のことがわかる。
| (1) |
なぜならの定義からならば任意のに対して であるから三角不等式を用いてに対して
なのでとなる。さて
と定義しよう。このとき次の事が成り立つ。
| (2) |
理由を説明しよう。今と仮定しても一般性を失わない。このときの定義からとするとなのでからがわかる。
さてさて
と定義すると明らかには開集合であり、からがわかる。この開集合について次の事が成り立つ。
| (3) |
理由を説明しよう。の定義からとすると が存在して となる。するとと三角不等式から
よってが成り立つ。
次の簡単な事実に注意しよう。
この事実から各点については族の高々1個の元としか交わりを持たない。よっては疎である。よっては疎なの開細分である。最後にがの被覆になってることを言おう。
を任意に与え、をとなる最小のの元とする。このとき からあるについてでありの最小からであり、なのでつまりはの被覆である。 ∎
いよいよBNSの証明に移る。
定理 6 (Bing-長田-Smirnovの距離化可能定理).
空間について以下は同値
| (1) | は距離化可能 | ||
| (2) | は疎な開基を持つ | ||
| (3) | は局所有限な開基を持つ |
証明.
は明らかである。以下を示そう。
[の証明]
が開基になることを示そう。ところで次の簡単な事実がある。
さてが開基なのでが開基であることを示すには各点と任意のについてあるが存在して
を示せば良いが、は被覆でありの細分であるから各点に対して
となるが存在する。そしてよりが成り立つ。よって
が成り立つ。よってが開基であることが示されたのでが成り立つ。
[の証明終わり]
[の証明]
の開集合系をとする。 条件から存在が保証されるの局所有な基底をとし、
としよう。
まず最初にが正規空間であることを示そう。を交わらない2つの閉集合とする。そして各について
と開集合族を定義し、さらに
と定義する。すると各が局所有限であることから
が成り立ち、の定義から任意のについて
| (1) |
となる。さらにがであることと、が開基であることから
| (2) |
が成り立つ。そしてさらにを用いて
と定義するとこれらは開集合であり、簡単に分かるようにならば
| (3) |
となる。 また
と置くとやはりこれも開集合であり、 から
となるが、から
となる。よっては正規である。
次にの位相と同じ位相を誘導する高々可算個のゲージを構成しよう。を用いてにつき擬距離を構成する。まずに対して
と置くとの局所有限性からは閉集合であり、を充たす。そこでの正規性からウリゾーンの補題を用いて
となる連続関数が存在する。これを用いて
と定義する。それぞれのの局所有限性を表現する開近傍をとすると、上ではは有限和になるのでは上の連続関数である。故には上の連続関数である。222一般に写像は任意のでが連続関数であるようなの開被覆が存在すれば、は上でも連続である。証明は容易だろうと思うが、一応おまけのセクションで証明する。よっての開集合はの開集合である。逆の事を示そう。
についてとすればならば
なのでであり、なので結局
となる。よってがの基底なのでの開集合はの開集合でもあり、は可算個のゲージで位相を付ける事ができる。よって命題4から は擬距離付け可能である。また、が開基であることと、元々がハウスドルフであることからについてが存在して
となることを見るのは容易いので、最終的にが距離付け可能であることがわかる。
[の証明終わり] ∎
以下このBNSを用いた系を述べる。
系 7 (ウリゾーンの距離化可能定理).
第二可算空間は距離化可能
証明.
元を一つしか持たない族は明らかに疎であるから可算な族は疎である。この事からウリゾーンの距離化可能定理は明らかである。 ∎
定義 8.
位相空間がc.c.c.を充たすとは、の互いに交わらない開集合の族の濃度が高々可算になるときに言う。
系 9.
距離空間に於いて次は同値333この命題はわざわざBNSを使わずとも証明できる。そのことからわかることは、距離空間には何かしら内在的な「可算性」があるということである。(もちろん第一可算公理を充たすのだが、そういう局所的なことではなく大域的な性質としての話である。)それを暴いたのがBNSである。
| (1) | 第二可算公理 | ||
| (2) | 可分 | ||
| (3) | リンデレフ | ||
| (4) | c.c.c. |
証明.
距離空間に限らず一般の位相空間で以下のよく知られた次の論理包含関係がある。
よって距離空間において[リンデレフ可分]と[c.c.c.第二可算公理]を示せばよい。
[c.c.c.第二可算公理の証明] Bing-長田-Smrnovの距離化可能定理からには疎な開基が存在するが、c.c.c.なら疎な族の濃度は高々可算になる。よって疎な族の濃度も高々可算である。よって疎な開基は濃度が高々可算な開基になるので第二可算公理が成り立つ。
[c.c.c.第二可算公理の証明終わり]
[リンデレフ可分の証明]
各毎に開球全体の族はの開被覆になるが、リンデレフ性から高々可算個の開球でを被覆出来る。その可算個の開球の中心をと置く。この時
は高々可算な集合であるが、これがで稠密であることを言おう。各についてを考える。この時の各々を中心とする開球はを被覆するのであるが存在してであるが、もちろんである。よってこの事からの任意の開集合はと共通部分を持つことがわかるのではで稠密である。
[リンデレフ可分の証明終わり] ∎
定義 10 (可算コンパクト).
位相空間はその上の任意の可算開被覆に有限部分被覆が存在するとき可算コンパクトという。また、可算コンパクト性は空間上の閉集合からなる任意の有限交叉的な可算族が共通部分をもつことと同値である。
補題 11.
可算コンパクト空間の疎な族は高々有限である。
証明.
対偶を示そう。 が無限個の集合からなる疎な族を持つとしよう。その疎な族から可算部分族を取れば、は疎な可算族をもつ事がわかる。それをとしよう。このときも疎な族である。そしてについて
と定義すれば各は非空な閉集合であり、を充たすのでは有限交叉性をもつ閉集合の可算な族だが、明らかに
なのでは可算コンパクトではない。 ∎
系 12.
距離空間に於いて可算コンパクト性とコンパクト性は同値な概念である。444この定理は普通は点列コンパクト性を経由して証明するのが普通であるが、BNSを用いると直接証明出来る。
証明.
コンパクト性から可算コンパクト性が出るのは明らかである。逆を示そう
BNSと補題11から可算コンパクト距離空間の疎な開基は高々可算な族になるので、は第二可算公理を充たす。従ってとくにリンデレフなのではコンパクトである。 ∎
2 おまけ
命題 13.
位相空間と 写像について、任意のでが連続関数であるようなの開被覆が存在すれば、は上でも連続である。
証明.
各上でが連続なので、任意のと 任意のの開集合について、はの開集合である。また、はの開集合なのではの開集合でもある。そしてが被覆を成すことから
が成り立ち、この式の右辺は開集合であるから、はの開集合である。はの任意の開集合であったからは上連続である。 ∎
References
- [1] 寺澤 順,トポロジーへの招待,日本評論社,2012
- [2] R.H.Bing,Metrization of topological spaces ,Canadian J. Math.3(1951) 175-186
- [3] A.R.Pears,DIMENSION THEORY OF GENERAL SPACES,Cambridge Univ.Press,1975
- [4] M.E.Rudin,A New Proof that Metric Spaces are Paracompact,Proc.Amer.Math.Soc.vol20(1969),p603
- [5] A.H.Stone,Paracompactness and product spaces,Bull,Amer.Math Soc. 54(1948),977-982
- [6] S.Willard,General Topology,Dover Publications,2004