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コンパクト性と全有界性と完備性

一色三良(concious77)
HTML変換日:2026年7月26日

この文章では X上の距離dに於けるaを中心とした半径rの開球を

B⁢(a,r;d)

と書くことにする。つまりB⁢(a,r;d)={x∈X|d⁢(a,x)<r}である。

またX上の距離dに於けるaを中心とした半径rの閉球を

C⁢(a,r;d)

と書くことにする。つまりC⁢(a,r;d)={x∈X|d⁢(a,x)≤r}である。

距離空間に於いて次のコンパクト性に関する基本的なことがよく知られている。

事実 1.

距離空間に於いて

コンパクト性⇔全有界かつ完備

この命題に対して次の2つの素朴な疑問が生まれるであろう。

問:距離化可能空間Xがその位相と両立する任意の距離に於いて全有界であるならXはコンパクトであるか?

問:距離化可能空間Xがその位相と両立する任意の距離に於いて完備であるならXはコンパクトであるか?

この2つの疑問に関する応えはYesである。この文章ではそのことを示そうと思う。

次の事実は距離空間に於いて点列コンパクト性とコンパクト性が同値になることから直ちに分かる。

事実 2.

ノンコンパクト距離空間Xには可算閉離散集合が存在する。

補題 3.

距離空間(X,d)と連続関数f:X→ℝについて

e⁢(x,y)=d⁢(x,y)+|f⁢(x)−f⁢(y)|

は距離となり、eの定める位相はdの定めるそれと同じになる。

証明.

eが距離になることは簡単に分かる。次に位相が一致することを見よう。 ε>0を任意に与える。 eは明らかに(X,d)の直積位相空間X×X上の連続関数になるのでaを任意に与えそれを固定した時e⁢(a,x)はxについて連続関数である。よってB⁢(a,ε;e)={x|e⁢(a,x)<ε}は(X,d)の開集合になる。a∈B⁢(a,ε;e)なので、あるδ>0が存在して

B⁢(a,δ;d)⊂B⁢(a,ε,e)

となる。

定義から明らかに

d⁢(x,y)≤e⁢(x,y)

なので

B⁢(a,ε;e)⊂B⁢(a,ε;d)

以上からdの定める位相とeの定める位相が一致することが分かる。 ∎

補題 4.

距離空間(X,d)についてdと同じ位相を誘導する距離eで、

e⁢(x,y)≤1

を充たすものが存在する。

証明.

e⁢(x,y)=min⁡{d⁢(x,y),1}と置けば良い。これが擬距離の公理を充たすことの証明は、読者へ委ねる。0<ε<1のとき、xを中心としたdによるε開球とeによるε開球は同じ集合になるのでdとeは同じ位相を誘導する。 ∎

まず最初にひとつ目の問への回答を証明しよう。

定理 5.

距離化可能空間Xがその位相と両立する任意の距離に於いて全有界であるならXはコンパクトである

証明.

対偶を示そう。つまり、ノンコンパクトな距離化可能空間にはその位相と両立する全有界でない距離が存在することを示そう。

Xと両立する距離のひとつをdとする。そしてXの可算閉離散集合をD={xi|i∈ℤ≥0}としよう。ここで番号付けはi≠j⟹xi≠xjであるとする。さてD上の連続関数f:D→ℝを

f⁢(xn)=n

で定義しよう。之は確かに連続である。そしてXは距離化可能空間なので特に正規空間であるから、ティーチェの拡張定理より連続関数F:X→ℝでF|D=fとなるものが存在する。このFを用いて

e⁢(x,y)=d⁢(x,y)+|F⁢(x)−F⁢(y)|

と定義すると補題3からeはXの位相と両立し、

e⁢(x0,xn)=d⁢(x0,xn)+|F⁢(x0)−F⁢(xn)|≥|0−n|=n

なので(X,e)は非有界な距離空間である。よって特に全有界ではない。(全有界距離空間は有界である。) ∎

次の定理を証明するにあたって以下の重要な事実を思い出そう。

事実 6 (Bing-長田-Smirnovの距離化可能定理).

T3空間Xについて以下は同値

(1) Xは距離化可能
(2) Xはσ疎な開基を持つ
(3) Xはσ局所有限な開基を持つ
定理 7.

距離化可能空間Xがその位相と両立する任意の距離に於いて完備であるならXはコンパクトである

証明.

対偶を示そう。つまりノンコンパクトな距離化可能空間にはその位相と両立する完備でない距離が存在する事を示そう。

Xの位相と両立する距離のひとつをdとする。ここでd≤1としてもよい (補題4) そしてXの可算閉離散集合をD={xi|i∈ℤ≥0}としよう。ここで番号付けはi≠j⟹xi≠xjであるとする。さてD上の連続関数f:D→ℝを

f⁢(xn)=n

で定義しよう。之は確かに連続である。そしてXは距離化可能空間なのでティーチェの拡張定理より連続関数F:X→ℝでF|D=fとなるものが存在する。このFを用いて

e⁢(x,y)=d⁢(x,y)+|F⁢(x)−F⁢(y)|

と定義すると補題3からeはXの位相と両立し、n>0なら

(1) n<e⁢(x0,xn)≤n+1

を充たす。さて、Xに属さない点ωを考え、各i∈ℤ≥0に対し、ωの近傍として

Ni=(X∖C⁢(x0,i;e))∪{ω}={x∈X|e⁢(x,x0)>i}∪{ω}

とし、Xの点の近傍はそのままとして Y=X∪{ω}に位相を定義しよう。するとこの近傍の定め方はちゃんと位相を定めYはXを開部分空間として含みさらにYはT3空間となる。さて事実6より存在が保証されるXのσ局所有限な開基をℬとすると

𝒲=ℬ∪{Ni|i∈ℤ≥0}

はYの開基となる。さらに{Ni|i∈ℤ≥0}は高々可算な族なので𝒲はσ局所有限な開基となるので再び事実6よりYは距離化可能空間である。Yと両立する距離のひとつをsとする。このとき(1)より

n>i⟹xn∈Ni

なので(Y,s)に於いて

limn→∞xn=ω

であるので(Y,s)の部分距離空間(X,s)の中で{xn}はコーシー列だが、収束しない(ω∉Xより) また距離空間(X,s)の位相はXの元々の位相と明らかに両立するのでXにはその位相と両立する完備ではない距離が存在する。 ∎

注意.

この点ωを付け加える操作は1点コンパクト化に似ている。

References

  • [1] R,Engelking,General Topology ,PWN,1977