コンパクト性と全有界性と完備性
この文章では 上の距離に於けるを中心とした半径の開球を
と書くことにする。つまりである。
また上の距離に於けるを中心とした半径の閉球を
と書くことにする。つまりである。
距離空間に於いて次のコンパクト性に関する基本的なことがよく知られている。
事実 1.
距離空間に於いて
| コンパクト性全有界かつ完備 |
この命題に対して次の2つの素朴な疑問が生まれるであろう。
問:距離化可能空間がその位相と両立する任意の距離に於いて全有界であるならはコンパクトであるか?
問:距離化可能空間がその位相と両立する任意の距離に於いて完備であるならはコンパクトであるか?
この2つの疑問に関する応えはYesである。この文章ではそのことを示そうと思う。
次の事実は距離空間に於いて点列コンパクト性とコンパクト性が同値になることから直ちに分かる。
事実 2.
ノンコンパクト距離空間には可算閉離散集合が存在する。
補題 3.
距離空間と連続関数について
は距離となり、の定める位相はの定めるそれと同じになる。
証明.
が距離になることは簡単に分かる。次に位相が一致することを見よう。 を任意に与える。 は明らかにの直積位相空間上の連続関数になるのでを任意に与えそれを固定した時はについて連続関数である。よってはの開集合になる。なので、あるが存在して
となる。
定義から明らかに
なので
以上からの定める位相との定める位相が一致することが分かる。 ∎
補題 4.
距離空間についてと同じ位相を誘導する距離で、
を充たすものが存在する。
証明.
と置けば良い。これが擬距離の公理を充たすことの証明は、読者へ委ねる。のとき、を中心としたによる開球とによる開球は同じ集合になるのでとは同じ位相を誘導する。 ∎
まず最初にひとつ目の問への回答を証明しよう。
定理 5.
距離化可能空間がその位相と両立する任意の距離に於いて全有界であるならはコンパクトである
証明.
対偶を示そう。つまり、ノンコンパクトな距離化可能空間にはその位相と両立する全有界でない距離が存在することを示そう。
と両立する距離のひとつをとする。そしての可算閉離散集合をとしよう。ここで番号付けはであるとする。さて上の連続関数を
で定義しよう。之は確かに連続である。そしては距離化可能空間なので特に正規空間であるから、ティーチェの拡張定理より連続関数でとなるものが存在する。このを用いて
と定義すると補題3からはの位相と両立し、
なのでは非有界な距離空間である。よって特に全有界ではない。(全有界距離空間は有界である。) ∎
次の定理を証明するにあたって以下の重要な事実を思い出そう。
事実 6 (Bing-長田-Smirnovの距離化可能定理).
空間について以下は同値
| (1) | は距離化可能 | ||
| (2) | は疎な開基を持つ | ||
| (3) | は局所有限な開基を持つ |
定理 7.
距離化可能空間がその位相と両立する任意の距離に於いて完備であるならはコンパクトである
証明.
対偶を示そう。つまりノンコンパクトな距離化可能空間にはその位相と両立する完備でない距離が存在する事を示そう。
の位相と両立する距離のひとつをとする。ここでとしてもよい (補題4) そしての可算閉離散集合をとしよう。ここで番号付けはであるとする。さて上の連続関数を
で定義しよう。之は確かに連続である。そしては距離化可能空間なのでティーチェの拡張定理より連続関数でとなるものが存在する。このを用いて
と定義すると補題3からはの位相と両立し、なら
| (1) |
を充たす。さて、に属さない点を考え、各に対し、の近傍として
とし、の点の近傍はそのままとして に位相を定義しよう。するとこの近傍の定め方はちゃんと位相を定めはを開部分空間として含みさらには空間となる。さて事実6より存在が保証されるの局所有限な開基をとすると
はの開基となる。さらには高々可算な族なのでは局所有限な開基となるので再び事実6よりは距離化可能空間である。と両立する距離のひとつをとする。このときより
なのでに於いて
であるのでの部分距離空間の中ではコーシー列だが、収束しない(より) また距離空間の位相はの元々の位相と明らかに両立するのでにはその位相と両立する完備ではない距離が存在する。 ∎
注意.
この点を付け加える操作は1点コンパクト化に似ている。
References
- [1] R,Engelking,General Topology ,PWN,1977