パラコンパクト等々2
この文章ではパラコンパクト性の基本的な言い換えを紹介する。次いでBing-長田-Smirnovの距離化可能定理を証明する。最後にここで紹介したパラコンパクト性の言い換えを用いて距離空間のパラコンパクト性の別証明を与える。
定義 1.
位相空間に於いての部分集合族が疎であるとはの各点に対しての近傍が存在して
| となるが存在しないか、もしくは1個しか無い |
を充たす時は疎であると言う。もちろんが疎であるときならばである。
命題 2.
位相空間に於いてが疎であるときは局所有限であり、 も疎である。
証明.
疎な族が局所有限であることは定義から明白である。が疎であることは局所有限の場合の対応する結果と同様の証明でわかる。 ∎
命題 3.
以下の命題は同値位相空間の部分集合族について以下は同値
| (1) | は疎 | ||
| (2) | は局所有限での元は互いに交わらない。 |
証明.
は明らかである。を示そう。場合分けをする。
のとき、局所有限性からは閉集合であるからは開集合であり、ひいてはの近傍でありについてとなる。
があるに属してるとき、の元は互いに交わらないのでこのようなは唯一つしか存在しない。さての局所有限性からも局所有限で特には閉集合であり、はの近傍での元とはたったとしか交わらない。
よって2つの場合からが疎であることが示された。 ∎
定義 4.
位相空間の部分集合族が局所有限であるとは高々可算個の局所有限な族が存在して
となることである。111文脈的に明らかであろうが、の元の和集合を表す記号とは違うので注意せよ。紛らわしいが、文脈的にわかるはずなので今後もこういう書き方をする。も使う。
同様に疎も定義する。
定義 5 (族正規).
位相空間が族正規であるとはの閉集合からなる任意の疎な族に対してとなる開集合の族が存在して
が成り立つことである。222は要請しないことにする明らかに族正規空間は正規である。
命題 6.
族正規空間に於いて上の族正規空間の定義に於いては疎であるように取る事が出来る。
証明.
と置くとは閉集合では開集合であり、を充たす。族正規空間は正規空間でもあるので
となる開集合が存在する。と置くと明らかにで
である。が疎であることを示そう。場合分けによる。
の場合。このときなのではの近傍でのどの元とも交わりを持たない。 のとき、つまりあるにが属しているとき。このときはの近傍である。の元が互いに交わらないこととであることからはただこの一つとしか交わらない。
以上よりは疎である。 ∎
定理 7.
パラコンパクトハウスドルフ空間は族正規
証明.
証明の方針はパラコンパクトハウスドルフ空間が正規であることの証明と同じである。
を閉集合からなる疎な族であるとする。とについて をで
であるように取る。パラコンパクトハウスドルフ空間が正則であることと、が疎であることからが閉であることからこの様なは確かに存在する。
さてこのとき
はの開被覆となるので局所有限な開被覆の細分が存在する。それをと書こう。そしてに対して
と置くとで局所有限性からよってがの細分であることから
が成り立つ。さて更にに対して
と置けばの局所有限性からこれは開集合で先の記述からでありさらに
である。以上からパラコンパクトハウスドルフ空間が族正規であることがわかる。 ∎
定義 8.
集合の部分集合族との点についてを
と定義する。これをに対するの度数という。
定義 9.
集合の被覆について任意の点についてが有限となるとき、をの点有限被覆という。
定義 10.
位相空間についてその任意の開被覆に点有限被覆となる開細分が存在するときをメタコンパクト、もしくは弱パラコンパクトと言う。明らかにパラコンパクト空間はメタコンパクトである。
定理 11.
空間に於いて 以下は同値
| (1) | はパラコンパクト | ||
| (2) | の任意の開被覆は閉集合からなる局所有限な被覆によって細分される | ||
| (3) | の任意の開被覆は(閉とも開とも限らない集合からなる)局所有限な被覆によって細分される | ||
| (4) | の任意の開被覆は局所有限な開被覆で細分される | ||
| (5) | の任意の開被覆は疎な開被覆で細分される。 | ||
| (6) | はメタコンパクトかつ族正規 |
証明.
性から各点の閉近傍全体が基本近傍系を成してることからがわかる。またとは明らかで、疎な族は特に局所有限でもあるからもわかるよって以下の論理包含図式が得られる。
以下を示す。この3つが示されれば、提示された条件の同値性は漏れ無く証明される。
[の証明]
をの開被覆とするとから局所有限な(閉とも開とも限らない)被覆で細分されるそれを と置く。は局所有限なので各毎にの局所有限性を担保するの近傍が存在する。ここで性の仮定からより強くはの有限個の元としか交わらないとしてもよい。するとはの開被覆なので再びからの局所有限な被覆である細分が存在する。このはの細分なのでの任意の元の閉包はの有限個の元としか交わらない。更に
と置くとこれは局所有限な閉被覆ではの有限個の元としか交わらない。 ここでに対して
と定義するとでありの局所有限性からは開集合である。この時次が成り立つ。について
なぜなら、とするとの定義からでしかありえない。逆は明らか。 対偶を取れば
も成り立つ。よってはの有限個の元としか交わらない。
が局所有限であることを示そう。各点についての局所有限性を担保するの近傍が存在する。はの有限個の元 としか交わらず、が被覆を成すことから
となる。よっての元がと交わればのいづれかと必ず交わっているが、の各々はの有限個の元とし交わらないのでもの有限個の元としか交わらない。よっては局所有限である。最後にがの細分を成していることから毎に
となるを選び、
とすると、明らかにの細分ででが被覆を成してることからも被覆でが局所有限であることからも局所有限である。以上でがパラコンパクトであることが示された。
[の証明終わり]
[の証明]
点有限な被覆に疎な開被覆である細分が存在する事を示せば良い。を点有限開被覆とし、に対して
と置けばであり、点有限性から
が成り立つ。帰納的にに対して開集合からなるの細分である疎な族を構成するが、 と置いたときに、条件
| (hoge) |
が成り立つように構成する。
のとき:であるからとおけば条件は充たされる。
まで構成されたとして、のとき、
と定義し、に対して
と定義するとこれは閉集合であり、
が成り立つ。なぜならが被覆であり、だからである。
さてが疎であることを示そう。を任意に与える。
のとき:ではの定義からの元と交わらない。
のとき:を含む個のの元が存在しする。そこでと置けばどんなに対しても、こののいづれかひとつはに属しないのでの定義からはの元と交わらない。
のとき:ちょうど個のの元がを含む。と置けば、の定義から はとしか交わらない。
よって以上からは閉集合からなる疎な族である。からが族正規であることと命題6から疎な開集合の族が存在してを充たす。これを用いて
と定義するとは開集合からなる疎な族であり、の細分である。また、明らかに。これが条件を充たすことをみよう。
まず帰納法の仮定から以下の包含関係が成り立つ。333一般に2つの集合についてであることに注意しよう。
そこでを任意に与えると であり、このときあるが存在して
である。よってであるからつまり
であるから結局
よってが充たされが任意のについて構成できた。
さてさて各が開集合からなる疎な族での細分なのでは開集合からなる疎な族での細分である。最後にがの被覆であることを見よう。
で
であるからよりが被覆となることがわかる。
[の証明終わり]
[の証明]
をの開被覆とするとから局所有限な開被覆で細分されるそれを
と置く。そして
とするとこれは開集合である。更に
としてを定義するとならばなので局所有限であり、の被覆である。。そして最後に
と置く。明らかにこれは開被覆であり、がの細分であることからもの細分である。が局所有限であることを示そう。とするとあるが存在してである。は高々としか交わらない。さてそれぞれに対してその局所有限性を担保するの被覆が存在するが、その近傍をそれぞれと置く。すると
はの近傍で明らかにの有限個の元としか交わらない。よってに(開とも閉とも限らないが)局所有限な細分が存在することがわかった。
[の証明終わり]
∎
命題 12.
擬距離空間についてと同じ位相を誘導する擬距離で、
を充たすものが存在する。
証明.
と置けば良い。これが擬距離の公理を充たすことの証明は、読者へ委ねる。のとき、を中心としたによる開球とによる開球は同じ集合になるのでとは同じ位相を誘導する。 ∎
定義 13 (ゲージ空間).
空間に擬距離の族が備わっている時、ををゲージとするゲージ空間という。ゲージ空間には
を準開基とした標準的な位相が定義される。ここではを中心としたはによる開球である。また上の命題からゲージ空間に対して同じ位相を誘導するゲージでの大きさがを超えないものが存在する。
命題 14 (ゲージ空間の擬距離距離付け可能性).
ゲージ空間に於いてが高々可算のときは擬距離付け可能であり、任意のについてあるが存在して
が成り立つならばは距離付け可能である。
証明.
としても良く、が高々可算なのでとしてもよい。このとき
とするとこれはどんなについても有限の値になり、この級数は一様収束するので上の連続関数である。。またこれが擬距離であることを見るのは容易い。この擬距離がゲージと同じ位相を誘導する事を見よう。はの連続関数なので擬距離空間の開集合はの開集合である。逆の事を示そう。任意の点についてならばなのでつまり、
となる。よっての開集合は開集合となるので結局は擬距離付け可能である。
最後にについてあるが存在して
が成り立つときとなるのでは距離となる。 ∎
定理 15 (Bing-長田-Smirnovの距離化可能定理).
空間について以下は同値
| (1) | は距離化可能 | ||
| (2) | は疎な開基を持つ | ||
| (3) | は局所有限な開基を持つ |
証明.
は明らかである。以下を示そう。
[の証明]
でを中心とする開球を表すことにする。 すると各に対して
はの開被覆でありかつはの開基を成している。 前回までで距離空間のパラコンパクト性はわかっている。先の定理より には疎な開被覆である細分が存在する。この時 も疎である。が開基になることを示そう。ところで次の簡単な事実がある。
さてが開基なのでが開基であることを示すには各点と任意のについてあるが存在して
を示せば良いが、は被覆でありの細分であるから各点に対して
となるが存在する。そしてよりが成り立つ。よって
が成り立つ。よってが開基であることが示されたのでが成り立つ。
[の証明終わり]
[の証明]
の開集合系をとする。 まず、条件からの任意の開被覆は被覆である疎な開細分をもつので定理11からパラコンパクトハウスドルフ空間である。よって特には正規である。
次にの位相と同じ位相を誘導する高々可算個のゲージを構成しよう。よりに基底として
となるものが選べる。これを用いてに対して擬距離を構成する。まずに対して
と置くとの局所有限性からは閉集合であり、を充たす。そこでの正規性からウリゾーンの補題を用いて
となる連続関数が存在する。これを用いて
と定義する。それぞれのの局所有限性を表現する開近傍をとすると、上ではは有限和になるのでこの上の連続関数である。よっては上の連続関数である。444一般に写像は任意のでが連続関数であるようなの開被覆が存在すれば、は上でも連続である。よっての開集合はの開集合である。逆の事を示そう。についてとすればならば
なのででなので結局
となる。よってがの基底なのでの開集合はの開集合でもあり、は可算個のゲージで位相を付ける事ができる。よって命題14から は擬距離付け可能である。また、が開基であることと、元々がハウスドルフであることからについてが存在して
となることを見るのは容易いので、最終的にが距離付け可能であることがわかる。
[の証明終わり] ∎
系 16 (ウリゾーンの距離化可能定理).
第二可算空間は距離化可能
証明.
元を一つしか持たない族は明らかに疎であるから可算な族は疎である。この事からウリゾーンの距離化可能定理は明らかである。 ∎
定義 17.
位相空間がを充たすとは、の互いに交わらない開集合の族の濃度が高々可算になるときに言う。
系 18.
距離空間に於いて次は同値555この命題はわざわざBing-長田-Smirnovを使わずとも証明できる。そのことからわかることは、距離空間には何かしら内在的な「可算性」があるということである。(もちろん第一可算公理を充たすのだが、そういう局所的なことではなく大域的な性質としての話である。)それを暴いたのがBing-長田-Smirnovの定理である。
| (1) | 第二可算公理 | ||
| (2) | 可分 | ||
| (3) | リンデレフ | ||
| (4) | c.c.c. |
証明.
距離空間に限らず一般の位相空間で以下のよく知られた次の論理包含関係がある。
よって距離空間において[リンデレフ可分]と[c.c.c.第二可算公理]を示せばよい。
[c.c.c.第二可算公理の証明] Bing-長田-Smrnovの距離化可能定理からには疎な開基が存在するが、なら疎な族の濃度は高々可算になる。よって疎な族の濃度も高々可算である。よって疎な開基は濃度が高々可算な開基になるので第二可算公理が成り立つ。
[c.c.c.第二可算公理の証明終わり]
[リンデレフ可分の証明]
各毎に開球全体の族はの開被覆になるが、リンデレフ性から高々可算個の開球でを被覆出来る。その可算個の開球の中心をと置く。この時
は高々可算な集合であるが、これがで稠密であることを言おう。各についてを考える。この時の各々を中心とする開球はを被覆するのであるが存在してであるが、もちろんである。よってこの事からの任意の開集合はと共通部分を持つことがわかるのではで稠密である。
[リンデレフ可分の証明終わり] ∎
§おまけ Stoneの定理の別証明
前回距離空間のパラコンパクト性は証明したが、定理11を用いた別証明が出来る。
定理 19 (Stoneの定理).
666この方法は[2]にはA.H.Stoneの論文[7]によるものと書いているが実際にその論文を読んでみると距離空間ではなく一般に全体正規空間のパラコンパクト性を証明している。その証明を距離を用いて手直しするとこのような証明になるのである。全体正規空間とは任意の開被覆に正規被覆列が存在する空間のことであるが、正規被覆列にはそれと「両立」する距離を誘導出来ることが[7]以前にTukeyによって知られていた。Stoneも最初は距離空間でやってみてその後抽象的に全体正規性から誘導される被覆の正規列でパラコンパクト性の証明を手直ししたのかもしれない。距離空間の任意の開被覆は疎な開被覆で細分出来る。よって定理11から距離空間はパラコンパクト
証明.
でを中心とする開球を表すことにする。
を距離空間の開被覆とし、その添字集合は整列しているとする。これの疎な細分で開被覆となるものを構成しよう。まず各に対して
と定義する。すると
が成り立つ。また次のことがわかる。
| (1) |
なぜならの定義からならば任意のに対して であるから三角不等式を用いてに対して
なのでとなる。さて
と定義しよう。このとき次の事が成り立つ。
| (2) |
理由を説明しよう。今と仮定しても一般性を失わない。このときの定義からとするとなのでからがわかる。
さてさて
と定義すると明らかには開集合であり、からがわかる。この開集合について次の事が成り立つ。
| (3) |
理由を説明しよう。の定義からとすると が存在して となる。するとと三角不等式から
よってが成り立つ。
次の簡単な事実に注意しよう。
この事実から各点については族の高々1個の元としか交わりを持たない。よっては疎である。よっては疎なの開細分である。最後にがの被覆になってることを言おう。
を任意に与え、をとなる最小のの元とする。このとき からあるについてでありの最小からであり、なのでつまりはの被覆である。 ∎
References
- [1] 寺澤 順,トポロジーへの招待,日本評論社,2012
- [2] R.H.BingMetrization of topological spaces ,Canadian J. Math.3(1951) 175-186
- [3] R,Engelking,General Topology ,PWN,1977
- [4] E.Michael,A note on paracompact spaces ,Proc.Amer.Math Soc.4(1953) 831-838
- [5] K.Nagami,Paracompactness and strong screenability,Nagoya Math J.8(1955),83-88
- [6] A.R.Pears,DIMENSION THEORY OF GENERAL SPACES,Cambridge Univ.Press,1975
- [7] A.H.Stone,Paracompactness and product spaces,Bull,Amer.Math Soc. 54(1948),977-982