閉写像云々
この文章では正規と言う言葉はを仮定しない意味で用いてかつ正規をと呼称する。
1 閉写像
次の良さのある命題が成り立つ。
命題 1 (射影公式).
写像とについて
が成り立つ。
証明.
簡単なので省略 ∎
系 2.
写像とについて
が成り立つ。
証明.
と射影公式からすぐにわかる。 ∎
定義 3 (小像(small image )).
の写像 による小像とは
のことである。
小像は一見掴みどころが無いように見えるが、次の命題を見ればなにとなくわかると思う。
命題 4.
写像とについて次が成立する。
である。特にについて
が成り立つ。
証明.
先の系を用いて
となり前半が成り立つ。後半も同様。 ∎
補題 5.
写像とについて次が成立する。
証明.
当たり前 ∎
いよいよ閉写像を定義する。
定義 6 (閉写像).
位相空間の間の連続写像が閉写像であるとはの閉集合のによる像がの閉集合に常になってることである。
閉写像は常に連続であることに注意しよう。
さて次の命題に移る前に位相空間についての近傍とは
となる集合のことであったことを思い出そう。のとき、の近傍は点の近傍と同じ意味である。
次の便利な閉写像の特徴付けがある。
定理 7.
位相空間の間の連続写像について以下は同値
-
(1)
は閉写像
-
(2)
によるXの開集合の小像はYの開集合
-
(3)
任意のとの任意の近傍についての近傍が存在して
が成り立つ。
-
(4)
任意のとの任意の近傍についての近傍が存在して
が成り立つ。
証明.
補題 8.
閉写像との部分空間について
は閉写像である。
証明.
の閉集合はの閉集合を用いてと書けるが、射影公式から
となる。は閉写像なのではの閉集合であるのではの閉集合である、よっては閉写像である ∎
1.1 閉写像で保たれる性質
位相空間の閉写像による像を閉像という。閉像にはドメインの性質が伝播することがしばしばある。これから先の閉写像の特徴付けを用いてそれらを示そう。閉像にはもちろんコドメインから相対位相が入っている。更にコドメインを制限することによって一般性を失うこと無く閉像を考える時は閉写像は全射であるとしてもよい。 以下この§内では全射閉写像を考えているものとする。
定理 9 ().
空間の閉像は空間
証明.
についてが閉なのでも閉となる。この事からすぐわかる。 ∎
定理 10 (正規性).
正規空間の閉像は正規
証明.
をの互いに素な閉集合とする。このときはの互いに素な閉集合となる。さてが正規であることからで互いに素な開集合が存在する。すると定理のから
となるの開近傍との開近傍が存在する。この時は互いに素な開集合となるので結局は正規である。 ∎
定理 11 (遺伝的正規性).
遺伝的正規空間の閉像は遺伝的正規
証明.
をの任意の部分空間とする。このときは遺伝的正規なのでの部分空間であるは正規である。よって補題8からは正規空間の閉像になるので上の定理からは正規である。 ∎
定理 12 (完全正規性).
完全正規空間の閉像は完全正規
証明.
をの開集合とする。これが集合であることを言えば良い。はの開集合であり、の完全正規性からはの集合となる。この事とが閉写像で全射であることを踏まえればがの集合となることがわかる。 ∎
明らかに次の系がわかる。
系 13.
空間の閉像は空間
系 14.
空間の閉像は空間
系 15.
空間の閉像は空間
定理 16 (コンパクトハウスドルフ性).
コンパクトハウスドルフ空間の閉像はコンパクトハウスドルフ
証明.
閉写像は連続なので閉像がコンパクトになることはすぐに分かる。あとは閉像のハウスドルフ性だが、コンパクトハウスドルフ空間がであることと上の定理からすぐに分かる。 ∎
定理 17 (コンパクト距離付け可能性).
コンパクト距離空間付け可能空間の閉像はコンパクト距離距離付け可能空間
証明.
ウリゾーンの距離化可能定理からわかる次の同値に注意しよう。
また、系13からはになるので、上の同値性を鑑みればが第二可算であることを示せば良い。をの可算な開基とする。 そしてとするとも可算である。さらに
とするとは閉写像であるからはの開集合である。がの開基であることを言おう。ととなる任意のの開集合を考える。このときであり先の定理9からはであるからは閉集合でありはの閉集合となる。特にはコンパクトである。よってが開基であることよりの有限個の元が存在して
となる。はであるからである。更に命題4とより
となる。之はがの開基であることを示している。よっては第二可算なコンパクトハウスドルフ空間であり、距離付け可能である。 ∎
注意.
後に完全写像というものが出てくるが、この定理17の証明を真似っ子すると全射完全写像が存在するときがわかる。ここではの重みである。
系 18.
をコンパクト距離付け可能空間をハウスドルフ空間とし、を連続写像とする。このときによるの像はコンパクト距離付け可能である。
証明.
コンパクト空間からハウスドルフ空間への連続写像は閉写像であることからわかる。 ∎
2 固有写像
この§では固有写像についての性質を調べる。
定義 19 (固有写像).
連続写像が固有、または固有写像であるとはの任意のコンパクト集合について がのコンパクト集合となること。
定義 20.
連続関数が次の条件充たすときを完全写像と呼ぶ111完全写像に全射性を仮定する流儀もあるが、ここでは全射性は特に要求しないこととする。
- ()
-
任意のについてはのコンパクト集合であり、かつは閉写像
固有写像と完全写像について次の2つの命題が成り立つ。
定理 21.
完全写像は固有
証明.
この定理のある意味での逆が成り立つこと証明するがその前に必要な補題は述べておく。
補題 22.
局所コンパクトハウスドルフ空間に於いて
が成り立つ。333これは局所コンパクトハウスドルフ空間の位相がそのコンパクト集合全体から誘導されるcoherent topologyと一致する事を示している。
証明.
は明らかであるからを示せば良い。
が成り立っているとしてを示せば良い。ここではに於ける閉包を表す。一般になので逆向きの包含関係を示す。を取るとが局所コンパクトハウスドルフであることからのコンパクト近傍が存在し条件からはの閉集合である。つまり
が成り立つ。なのでが成り立ち結局なので
が成り立つ。 ∎
定理 23.
が局所コンパクトハウスドルフのとき 固有写像は完全写像
証明.
注意.
この証明の方針だとについて
及び
が成り立ってさえいれば定理が成り立つことがわかる。面倒なのでここで注意するに留める。例えば第一可算なハウスドルフ空間や、条件を充たし閉コンパクト集合で被覆される空間などがそうである。
が成り立つ空間をk-spaceと呼んだりするがk-spaceと言うものは今や様々な同値ではない定義があるようだ。
系 24.
がハウスドルフ空間でが局所コンパクトハウスドルフ空間であるとき連続写像に関する以下の2つの性質は同値
そしてこの2つの内いづれか(つまり両方)を充たすが存在するときは必然的に局所コンパクトハウスドルフ空間となる。
証明.
同値性は先の定理たちから明らかであろう。このようなの存在からが局所コンパクトハウスドルフになることを言おう。局所コンパクト性からは相対コンパクトな開集合で被覆されるが、その被覆ののよる引き戻しは固有性からの相対コンパクトな開被覆となる。相対コンパクトな開被覆が存在するハウスドルフ空間は局所コンパクトハウスドルフ空間になる。 ∎
3 おまけ
このセクションで述べる命題について厳密な証明はやらない。やっつけ仕事で作った。
定義 25 (普遍閉写像(universally closed map)).
連続写像が普遍閉写像であるとは任意の位相空間に対して
が閉写像になることである。
事実 26.
完全写像は普遍閉写像である。
系 27.
局所コンパクトハウスドルフ空間の間の固有写像は普遍閉写像である。
注意.
ブルバキの数学原論ではむしろ普遍閉写像の事を固有写像(邦訳では適性写像)と読んでおり、今風の固有写像はこの文章で言う系24の形で局所コンパクトハウスドルフ空間に対する言い換えとして述べられていたのだが、いつの間にかそっちのほうが気に入られたのか使い勝手が良かったのか、コンパクト集合の引き戻しがコンパクトと言う定義に取って代わられてしまったようだ。
実は条件は写像の普遍閉性と同値である。つまり完全写像と普遍閉写像は同値な概念である。証明は[1]の適性写像の章をを参照のこと。ただし完全写像という言葉は用いられていない。
命題 28.
コンパクトハウスドルフ空間の間の連続写像は条件を充たす。特にそのような写像は固有であり、普遍閉である。
証明.
コンパクトハウスドルフ空間の間の連続写像なので当たり前。 ∎
定理 29.
は以下では離散位相の入った二元集合を表しはそれぞれカントール集合と単位閉区間を表すことにする。このとき 位相空間と任意の無限基数について以下は同値
| (1) | |||
| (2) | |||
| (3) | |||
| (4) |
証明.
よりはわかる。
は全射が存在することとコンパクトハウスドルフ空間の間の連続写像は常に普遍閉になることと正規空間の閉像が正規になることからわかる。
はとなるコンパクトハウスドルフ空間はに埋め込めることと正規空間の閉集合は正規であることからわかる。
は自明。 ∎
注意.
で位相空間の重みを表す。つまり位相空間の開基の最小濃度である。
この定理は実は-Paracompactnessの特徴づけに使われる。
References
- [1] ニコラ・ブルバキ,数学原論 位相1
- [2] 森田紀一,位相空間論,岩波全書331,岩波書店1981
- [3] R,Engelking,General Topology ,PWN,1977