リース-マルコフ-角谷の表現定理
この文章では局所コンパクトハウスドルフ空間上の実数値関数の線型形式と測度の関係を物語るリース-マルコフ-角谷の表現定理を証明する。この文章では位相空間のコンパクト集合全体を記号で表すことにする。はもちろん開集合系である。またでの冪集合を表す。はのフラクトゥールである。Powerのである。またこの文章では、はを含めないものとする。つまりから始まる。しかし証明のstepはから始まる。悪しからず。
証明は全部で16stepあるが各stepひとつひとつは難しくない。証明のアイデアはシンプルだが、証明がやたらに長いだけである。長さに心を脅かされないで欲しい。
-1 位相からの準備
定義 1 (関数の台).
位相空間上の実連続関数について、の台(サポート)を
と定義する。閉包をとっていることに注意しよう。台は常に閉集合である。
台がコンパクトな関数はコンパクト台、もしくはコンパクトサポートを持つという。
定理 2 (局所コンパクトハウスドルフ空間上のウリゾーンの補題).
局所コンパクトハウスドルフ空間の互いに交わらないコンパクト集合と閉集合は実連続関数で分離できる。更にその連続関数のコドメインはに取れる。
証明.
空間を1点コンパクト化してもわかるし、一般に完全正則空間はこの性質をもつことからもわかる。局所コンパクトハウスドルフ空間は完全正則なのである。もしくは以下で述べる局所コンパクトハウスドルフ空間のコンパクト集合上の単位の分割からもわかる。 ∎
以下の三つの単位の分割に関する定理はこの文章では証明しない。電波通信の該当する記事を見て欲しい。
定理 3 (コンパクトハウスドルフ空間上の単位の分割).
コンパクトハウスドルフ空間の有限開被覆 について実連続関数の族が存在して以下を充たす。
定理3の系として次のものがある。
系 4 (局所コンパクトハウスドルフ空間のコンパクト集合上の単位の分割).
局所コンパクトハウスドルフ空間のコンパクト集合と有限個の開集合の族 が
を充たしてるとする。このとき実連続関数の族が存在して以下を充たす。
このような関数族を開被覆に従属する上の単位の分割という。
また、系3を改良して単位の分割がコンパクト台を持つようにできる。
定理 5 (局所コンパクトハウスドルフ空間のコンパクト集合上のコンパクトサポートな単位の分割).
局所コンパクトハウスドルフ空間のコンパクト集合と有限個の開集合の族 が
を充たしてるとする。このとき実連続関数の族が存在して以下を充たす。
このような関数族を開被覆に従属する上のコンパクト台を持つ単位の分割という。
0 定理と証明
定義 6.
局所コンパクトハウスドルフ空間上の台がコンパクトな実連続関数全体を
で表す。更にの元の内、常に正の値を取る関数全体を
と表す。 つまり
である。
定義 7 (正値線型形式).
上の線型形式とは線形写像
のことであるが、線型形式のうち
を充たすを上の正値線型形式という。またならから
つまり
となるから正値線型形式とは単調な線型形式と言っても良い
定義 8 (内部正則性、外部正則性).
が位相空間とし、更に 測度空間がを充たすとする。この仮定のもとの可測集合が
を充たすときは外部正則であるという。またが
を充たすときは内部正則であるという。
定理 9 (Riesz-Markov-角谷の表現定理).
局所コンパクトハウスドルフ空間上の関数空間上のの正値線型形式が与えられたときこのに対して上の加法族と上の測度が存在して以下を充たす。
| (1) | |||
| (2) | |||
| (3) |
| (4) |
| (5) | |||
| (6) |
ここでは位相空間のボレル集合族を表す。さらに上のこのような測度は一意的である。
証明
step -1 (準備).
証明で用いる関数や集合を定義する。まずが
を充たすとき
と書くことにする。更にが
を充たすとき
と書くことにする。は普通の二項関係では無いことに注意しよう。ここででの特性関数を表した。 さてについて
と定義する。は写像であり、定義から明らかに
である。次のようにしての定義域をまで拡張する。について
と定義する。から一般ので定義されたはに対するとちゃんと両立している。また、定義からすぐわかるようにについて
となる。これをの単調性と呼ぼう。 さて 加法族や測度すら構成していないが呼び名が無いのも不便なのでが
を充たしてるとき内部正則性を持つ、または内部正則であると言うことにしよう。この語は正式には加法族を定義した後に使うべきだが、証明の中で呼び名がないのが本当に不便なだけである。そして
と定義し、このを用いて
と定義する。の単調性からのとき でならばがわかる。よって定理のの性質が確認された。
step 0 (step 1のための主張:開集合に対する劣加法性).
のとき
証明.
簡単のためにと置く。 となる任意のを取るとの定義から
となるが存在する。さてと置くとでであるのでの中から有限個選んでを被覆できる。必要なら番号付けを変えて
として良い。定理5[局所コンパクトハウスドルフ空間上の台がコンパクトな単位の分割]よりに従属する上の台がコンパクトな1の分割が存在する。これについてとから
及び
が成り立つので、との定義とを合わせて
を得る。つまり
なのでの任意性から
が分かる。 ∎
step 1 (劣加法性).
に対し
証明.
ある番号についてならばの単調性から
となるので不等式は成立する。
のときを考えよう。このときの定義から 任意のを与えたとき各について
となる開集合が存在する。そして
なので先の主張との単調性から
を得て、は任意であったので結局
が成り立つ。 ∎
step 2 ( と の関係).
が成り立つ。更にが成り立ち、 特にが成り立つ。つまり
証明.
をとする。そしてを任意に与え
と定義するとは開集合でとなる。ここでを使いたいがためにとなるを任意に与えるともちろん
であり、上なのでが成り立つので
を得る。よって
を得る。そしては任意だったので、の単調性と合わせて
が分かる。 ゆえに任意のについて
が成り立ち、とすれば
を得て、なので、ということが分かった。
さて、は有限の値であることがわかったのでを任意に与えたときの定義から
となる開集合が存在する。ウリゾーンの補題の補題から となるが存在するが、の定義から
となる。結局
が成立するが、これはつまり
が成り立つということである。 ∎
step 3 (開集合の内部正則性).
ならばは内部正則である。よって特にならば
証明.
となる任意のを与えるとが存在して
となる。さてと置く。このときとなる任意のについて なので
そしてとなるで下限を取ると先のstep2[との関係]より
なので
つまり
が成り立つ。そして は任意でであったので結局
が成立する。 ∎
step 4 (step 5のための主張).
が互いに素なとき
が成立する。
証明.
step 5 (での完全加法性).
が互いに素な族のとき
が成り立つ。そして特にならばである。
証明.
に注意しよう。まずなので任意のを与えると、内部正則性から各毎に
となるが存在する。が互いに素なのでも互いに素で と置くと先のstep4を繰り返し用いて
を得る。さてなので、の単調性から
つまり
が任意ので成り立つ。 は任意なので
が任意ので成り立つ。そして として
を得る。 逆向きの不等式はstep1[劣加法性]から得られるので結局
が得られてこのstep5の前半が示された。以下後半を示す。
ならば
より、任意にを与えたときに番号を十分大きく取れば,
で111ならばこの不等式は成り立たないかつ、はコンパクトなので結局
が得られる。よってとなる。 ∎
step 6 (内側と外側からの近似).
以下は同値
| (1) | |||
| (2) |
証明.
[]
の定義からに対してとなるが存在して
を充たす。ここでに注意せよ。そしてから内部正則性によりに対してとなるが存在して
を充たす。に注意せよ。 そしては開集合でなのでstep3[開集合の内部正則性]よりそしてstep2[との関係]よりなのでstep5[上の完全加法性]より
が成り立つ。つまり
である。そしてより
なのでが結論される。
[の証明終わり]
[の証明終わり] ∎
step 7 (の有限加法性).
証明.
step 8 (との関係).
が成立する。
step 9 (の加法性).
は加法族
証明.
step 10 (Borel性).
はのボレル集合を全て含む。
証明.
step 11 (の正体).
証明.
見やすくするためにと置く。定義から明らかにとなることに注意せよ。
ならばであるのでの定義からが存在し、
を充たす。そしてよりなのでstep3[開集合の内部正則性]よりとなる。さてとstep6[内側と外側からの近似]から任意にを与えるとが存在して
を充たす。そしてなので、の定義からこのについてなので 内部正則性からが存在して
となる。 さて、よりなので
となり、
が従う。 つまり
が成り立ち、 これはが内部正則となることを示している。よってつまりとなる。
以上からがわかる。 ∎
step 12 (測度).
は上の測度である。
証明.
これまでのstepで上に測度が構成された。あとはと両立することと、一意性を示せばよい。
step 13 (との両立性).
が成立する。
証明.
を示せば良い。なぜならの代わりにを当てはめれば線形性から逆向きの不等式が得られるからである。以下この不等式を示す。
とを任意に与えと置く。そしてこのとについて
となる点列を適当に一つ固定する。更にこの点列に対応して
と定義すると、の連続性からはのボレル集合であるから各もボレル集合であり、結局となる。
また、定義から明らかには互いに素で であること及び
が成り立つことに注意せよ。
そしてなのでであり、の定義から各毎にが存在して
を充たす。が連続関数であることからは開集合で、となるから、 必要ならととの共通部分を新たにと名前を付け替えて、は更に付け加えて
を充たすとしてもよい。さて明らかに
なのでが局所コンパクトハウスドルフ空間であることと定理5[局所コンパクトハウスドルフ空間上の台がコンパクトな単位の分割]から台がコンパクトな実連続関数の族が存在して以下を充たす。
そしてこの性質から
がわかり、step2[との関係]から
がわかる。そしてから簡単に
が知れる。さらに なので
がわかり、からなので
がわかる。つまり
である。このは単関数であり、
となる。そしてなので積分の単調性から
が分かり、以上を合わせて
となることに留意せよ。
以上分かったことをふんだんに用いて目標の不等式を示す。 まずから
がわかる。そしてから
と得る。次にと開集合に対するの定義からなのでに注意して
を得る。の取り方からが分かり、これととに注意して
を得る。ここまでをまとめると
である。この不等式の右辺を更に評価しよう。からである。に注意せよ。そして留意しておいたから
なので結局
を得る。 は任意だったので結局
が分かる。 ∎
step 14 (測度の一意性).
可測空間上で定理の条件を充たす二つの測度を与える。任意のは外部正則なので開集合の上でとが一致していれば上でも一致するが、任意の開集合は内部正則なので、結局上でが一致していれば上一致する。以下上二つの測度が一致することを示す。
を任意に与える。すると外部正則性から任意にを与えると
となるが存在する。そしてウリゾーンの補題からとなる関数が存在する。このときなので積分の単調性から
となり、の取り方からなので結局
を得る。 さて
なのでから
が分かる。 以上から
を得るがは任意だったので
を得る。の役割を入れ替えて逆向きの不等式も得られるので
がわかる。よって一意性が確かめられた。
以上によりリース-マルコフ-角谷の表現定理の証明は終わった。
注意.
上の正値線形形式は上だけで完全に決定されることに注意しよう。つまり上の関数が
| (1) | |||
| (2) | |||
| (3) |
を充たすならばは上に正値線形形式に一意的に拡張されるのである。
についてとしたときにと書けるがこれを使ってを
と拡張すればよいし、線形に拡張するにはこのやり方しかないのもすぐにわかる。
上のリース-マルコフ-角谷の表現定理を使って測度を構成する際には上に
| (1) | |||
| (2) | |||
| (3) |
を充たす関数が与えられさえすればよいのである。この方法は例えばハール測度を構成する際にも用いられる。
References
- [1] W.Rudin,Real and Complex Analysis second edition,McGraw-Hill, 1974
- [2] 梅垣壽春・大矢雅則・塚田真,測度・積分・確率,共立出版,1987