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測度空間と積分そして収束定理

電波通信
HTML変換日:2026年7月26日

この文章では測度空間と測度による積分を定義し、収束定理を証明する。

1 測度空間

最初のセクションでは可測空間上に測度と呼ばれる集合関数を定義する。セクションの後半では測度の性質を次々述べていく。特に測度のσ加法性から導かれる測度の収束定理ともいうべき命題3は後の積分の収束定理の雛形となり、とても重要である。

定義 1 (測度).

μがX上のσ加法族𝔐上の測度であるとは

μ:𝔐→[0,∞]

で

μ⁢(Ø)=0

かつ,互いに交わらぬ𝔐の部分集合{An}n∈ℕ⊂𝔐に対して

μ⁢(∐n∈ℕAn)=∑n=0∞μ⁢(An)

を充たす時に言うこのとき三つ組(X,𝔐,μ)を測度空間とも言う。

注意.
μ⁢(∐n∈ℕAn)=∑n=0∞μ⁢(An)

を完全加法性などと呼ぶ。

以下では測度に対する便利な性質を証明していく。 まず最初に包含関係に関する性質から。

命題 2.

(X,𝔐,μ)を測度空間とするとき以下の事が成り立つ。

(1) A,B∈𝔐,A∩B=Ø⟹μ⁢(A∪B)=μ⁢(A)+μ⁢(B)
(2) A,B∈𝔐,A⊂B⟹μ⁢(A)≤μ⁢(B)
(3) A,B∈𝔐,A⊂B,μ⁢(A)<∞⟹μ⁢(B∖A)=μ⁢(B)−μ⁢(A)
証明.

(1)について{An}n∈ℕを

A1=A,A2=B,An=Ø⁢(n≥3)

と定義すると{An}n∈ℕは互いに交わらず{An}n∈ℕ⊂𝔐なので

μ⁢(∐n∈ℕAn)=∑n=0∞μ⁢(An)

が成り立つが∐n∈ℕAn=A∪Bでμ⁢(Ø)=0なので

μ⁢(A∪B)=μ⁢(A)+μ⁢(B)

が成り立つ。
(2)についてB∖A∈𝔐でB∖AとAは互いに素でA⊂Bより (B∖A)∪A=Bなので(1)より

μ⁢(B)=μ⁢(B∖A)+μ⁢(A)

そしてμ⁢(B∖A)≥0より

μ⁢(B)≥μ⁢(A)

を得る。
(3)についてB∖A∈𝔐でB∖AとAは互いに素でA⊂Bより (B∖A)∪A=Bなので(1)より

μ⁢(B)=μ⁢(B∖A)+μ⁢(A)

そしてμ⁢(A)<∞よりμ⁢(A)を左辺に移項できて

μ⁢(B∖A)=μ⁢(B)−μ⁢(A)

を得る。 ∎

次に、単調な族とその測度の極限に関する性質を述べる。これらの性質は収束定理の礎になる大事な性質である。

命題 3.

(X,𝔐,μ)を測度空間とするとき以下の事が成り立つ。

(1) {An}n∈ℕ⊂𝔐⁢An⊂An+1⟹μ⁢(⋃n∈ℕAn)=limn→∞μ⁢(An)
(2) {An}n∈ℕ⊂𝔐,An+1⊂An,μ⁢(A1)<∞⟹μ⁢(⋂n∈ℕAn)=limn→∞μ⁢(An)
証明.

(1)について、まず任意のn∈ℕについてμ⁢(An)<∞となる場合を考える。 帰納的に{Bk}k∈ℕを

B1=A1,Bn=An∖An−1⁢(n≥2)

と定義すると{Bk}k∈ℕは互いに素で{Bk}k∈ℕ⊂𝔐となりさらに

⋃n∈ℕAn=∐k∈ℕBk

となる。よって完全加法性から

μ⁢(⋃n∈ℕAn)=μ⁢(∐k∈ℕBk)=∑k=1∞μ⁢(Bk)=limn→∞(∑k=1nμ⁢(Bk))

となるが、任意のn∈ℕについてμ⁢(An)<∞なので命題2の(1)よりμ⁢(Bn)=μ⁢(An)−μ⁢(An−1)⁢(n≥2)であるので

∑k=1nμ⁢(Bk)=μ⁢(A1)+∑k=2n(μ⁢(Ak)−μ⁢(Ak−1))=μ⁢(An)

なので結局

μ⁢(⋃n∈ℕAn)=limn→∞μ⁢(An)

を得る。あるN∈ℕについてμ⁢(AN)=∞のときはN≤nならμ⁢(An)=∞なので

limn→∞μ⁢(An)=+∞

で AN⊂⋃n∈ℕAnであるから命題2の(2)より

μ⁢(⋃n∈ℕAn)=+∞

となるから確かに

μ⁢(⋃n∈ℕAn)=limn→∞μ⁢(An)

は成立する。 (2)について{Bk}k∈ℕを

Bk=A1∖Ak

と定義するとBk⊂Bk+1で

⋃k∈ℕBk=A1∖⋂n∈ℕAn

であるから(1)より

μ⁢(A1∖⋂n∈ℕAn)=limn→∞μ⁢(Bn)=limn→∞μ⁢(A1∖An)

となるが、μ⁢(A1)<∞と単調減少性よりμ⁢(⋂n∈ℕAn)<∞,μ⁢(An)<∞ なので命題2の(3)より

μ⁢(A1∖⋂n∈ℕAn)=μ⁢(A1)−μ⁢(⋂n∈ℕAn)
μ⁢(A1∖An)=μ⁢(A1)−μ⁢(An)

なので

μ⁢(A1)−μ⁢(⋂n∈ℕAn)=limn→∞μ⁢(A1)−μ⁢(An)=μ⁢(A1)−limn→∞μ⁢(An)

よってμ⁢(A1)<∞より

μ⁢(⋂n∈ℕAn)=limn→∞μ⁢(An)

を得る。 ∎

最後に劣加法性を証明する。

命題 4 (劣加法性).

(X,𝔐,μ)を測度空間とし、 {An}n∈ℕ⊂𝔐のとき

μ⁢(⋃n=1∞An)≤∑n=1∞μ⁢(An)

が成立する

証明.

まず

∀n∈ℕμ⁢(⋃k=1nAk)≤∑k=1nμ⁢(Ak)

を示す。帰納法で示すがn=2の場合を示せば一般の場合はようにわかるのでn=2の場合のみ示す。命題2の(1),(2)とA1∪A2=(A1∖A2)∪A2より

μ⁢(A1∪A2)=μ⁢(A1∖A2)+μ⁢(A2)≤μ⁢(A1)+μ⁢(A2)

となるからn=2の場合が示された。
  さて定理3の(1)より

limn→∞μ⁢(⋃k=1nμ⁢(Ak))=μ⁢(⋃n∈ℕAn)

なので∀n∈ℕμ⁢(⋃k=1nAk)≤∑k=1nμ⁢(Ak)においてn→∞とすると

μ⁢(⋃n=1∞An)≤∑n=1∞μ⁢(An)

が従う。 ∎

2 積分そして収束定理

このセクションでは積分を単関数のクラス、非負可測関数関数のクラス、一般の可測関数のクラスへと順次どんどん定義し拡張していく。その中で基本的だが強力な収束定理が証明されていく。

定義 5 (単関数の正規表示).

単関数とは有限個の可測集合E1,E2⁢⋯⁢Enと非負実数a1,a2⁢⋯⁢anをつかって

s=∑k=1mak⁢χEk

と書ける関数の事だったがこの表示は一意的ではない。このことは簡単に了解されると思う。単関数のこのような表示のうち、sの取りうる正の値をa1,a2⁢⋯⁢an(0は除く)として

s=∑k=1mak⁢χEk⁢(Ek={s=ak})

という表示がどんな単関数についても可能だが。このような表示を正規表示という。

定義 6 (単関数の積分).

単関数sの積分をsの正規表示s=∑k=1mak⁢χEk⁢(Ek={s=ak})を用いて

∫Xs⁢𝑑μ=∑k=1mak⁢μ⁢(Ek)

と定義する。またXの部分集合E上の積分を

∫Es⁢𝑑μ=∫Xs⋅χE⁢𝑑μ

と定義する。

注意.

単関数の積分の定義に現れるEkは(Ek={s=ak})であることに注意しよう。特性関数の取り方が特殊なのである。単関数は特性関数の非負の係数による線型結合で表される関数だが、今の時点では積分は特性関数による表示の仕方によらないかどうかは全く不明なのである。

補題 7 (単関数の積分の線形性).

2つの可測関数s,uとα,β∈[0,+∞)

∫X(α⁢s+β⁢u)⁢𝑑μ=α⁢∫Xs⁢𝑑μ+β⁢∫Xu⁢𝑑μ

が成立する。

証明.

まずβ=0のとき、つまり

∫Xα⁢s⁢𝑑μ=α⁢∫Xs⁢𝑑μ

は積分の定義からすぐにわかる。よってα=β=1のときつまり積分の加法性

∫X(s+u)⁢𝑑μ=∫Xs⁢𝑑μ+∫Xu⁢𝑑μ

を示せば定理は示されたことになる。更に帰納法から

s=∑i=1nai⁢χAi⁢u=b⁢χB

の場合に積分の加法性を示せば一般の単関数の場合も積分の加法性が導かれる。ただしsは正規表示されているとする。まずs+uの積分 を計算するためにs+uの正規表示を調べよう。簡単にわかるように

Im⁢(s+u)⊂{0,b,a1,a2,⋯,an,a1+b,a2+b,⋯,an+b}

である。そして

{s+u=ai+b}=Ai∩B

なのでA=∐i=1nAiとして

{s+u=ai}=Ai∖(Ai∩B),{s+u=b}=B∖(A∩B)

である。これらからs+uの正規表示

s+u=∑i=1n(ai+b)⁢χAi∩B+∑i=1nai⁢χAi∖(Ai∩B)+b⁢χB∖(A∩B)

が得られる。よってs+uの積分が計算できる。測度の加法性から

∫X(s+u)⁢𝑑μ = ∑i=1n(ai+b)⁢μ⁢(Ai∩B)+∑i=1nai⁢μ⁢(Ai∖(Ai∩B))+b⁢μ⁢(B∖(A∩B))
= ∑i=1nai⁢μ⁢(Ai∩B)+∑i=1nai⁢μ⁢(Ai∖(Ai∩B))+∑i=1nb⁢μ⁢(Ai∩B)+b⁢μ⁢(B∖(A∩B))
= ∑i=1nai⁢(μ⁢(Ai∩B)+μ⁢(Ai∖(Ai∩B)))+b⁢μ⁢(A∩B)+b⁢μ⁢(B∖(A∩B))
= ∑i=1nai⁢μ⁢(Ai)+b⁢μ⁢(B)

である。ここで

∑i=1nμ⁢(Ai∩B)=μ⁢(B)

を用いた。ところで定義から

∫Xs⁢𝑑μ=∑i=1nai⁢μ⁢(Ai),∫Xu⁢𝑑μ=b⁢μ⁢(B)

なので結局

∫X(s+u)⁢𝑑μ=∫Xs⁢𝑑μ+∫Xu⁢𝑑μ

がわかる。 ∎

この補題からすぐに次のことがわかる。

系 8.

単関数sがs=∑k=1mak⁢χEkと表示されているとする。ただし正規表示じゃなくとも良い。このとき

∫Xs⁢𝑑μ=∑k=1mak⁢μ⁢(Ek)

となる、また

∫As⁢𝑑μ=∫Xs⋅χA⁢𝑑μ=∑k=1mak⁢μ⁢(Ek∩A)
証明.

上の補題からすぐわかる。後半は特性関数についてχA⋅ch⁢iB=χA∩Bであることからわかる。 ∎

補題 9 (単関数の積分の単調性).

2つの可測関数s,uがs≤uを充たしてるとき

∫Xs⁢𝑑μ≤∫Xu⁢𝑑μ

が成立する。

証明.

s,uは正規表示で

s=∑i=1nai⁢χAi,u=∑j=1mbj⁢χBj

と表示されてるとしよう。この時

∫Xs⁢𝑑μ=∑i=1nai⁢μ⁢(Ai),∫Xu⁢𝑑μ=∑j=1mbj⁢μ⁢(Bj)

である。さて{Ai},{Bj}は正規正規の定義から共に互いに素な族である。そして

Ai=∐j=1mAi∩Bj,Bj=∐i=1nBj∩Ai

である。 ここでAi∩Bj≠Øのときs|Ai≡ai,u|Bj≡bjとs≤uから

ai≤bj

である。よって

ai⁢μ⁢(Ai∩Bj)≤bj⁢μ⁢(Ai∩Bj)

がわかる。 そして

∫Xs⁢𝑑μ = ∑i=1nai⁢μ⁢(Ai)=∑i=1nai⁢(∑j=1mμ⁢(Ai∩Bj))
= ∑i=1n∑j=1mai⁢μ⁢(Ai∩Bj)≤∑i=1n∑j=1mbj⁢μ⁢(Ai∩Bj)
= ∑j=1m∑i=1nbj⁢μ⁢(Ai∩Bj)=∑j=1mbj⁢(∑i=1nμ⁢(Ai∩Bj))
= ∑j=1mbj⁢μ⁢(Bj)=∫Xu⁢𝑑μ

となり定理が示された。 ∎

定義 10 (非負値可測関数の積分).

非負可測関数fに対して

∫f⁢𝑑μ:=sup{∫s⁢𝑑μ|s⁢は⁢単⁢関⁢数⁢で⁢0≤s≤f⁢を⁢充⁢た⁢す}

と定義する。 また、

∫Ef⁢𝑑μ=∫XχE⁢f⁢𝑑μ

と定義する。

単関数の積分の単調性から、単関数に対する積分と、この非負可測関数に対する積分は、単関数に対して一致する。
非負可測関数の定義から明らかに次のことがわかる。

命題 11.

2つの非負可測関数f,gがf≤gを充たすならば

∫Xf⁢𝑑μ≤∫Xg⁢𝑑μ
証明略.

∎

系 12.

非負可測関数について

∫Xf⁢𝑑μ≥0
命題 13.

非負可測関数fとa∈[0,+∞)について次が成り立つ

∫Xa⁢f⁢𝑑μ=a⁢∫Xf⁢𝑑μ
証明.

明らかであろう。 ∎

定理 14 (単調収束定理).

X上の非負可測関数列 {fn}n∈ℕが

fn≤fn+1

を充たすとし、f⁢(x):=limn→∞fn⁢(x)と置く、このときfは可測であり、

limn→∞∫Xf⁢𝑑μ=∫Xf⁢𝑑μ

が成立する。

証明.

∀n∈ℕ⁢fn≤fより明らかに∫Xfn⁢𝑑μ≤∫Xf⁢𝑑μが成り立つので

limn→∞∫Xfn⁢𝑑μ≤∫Xf⁢𝑑μ

よって以下逆向きの不等号を示す。
0≤s≤fとなる単関数sを任意に与え、互いに交わらぬ可測集合{Sk}を用いてsは

s=∑k=1mak⁢χSk

という形とする。 t∈[0,1)を任意に固定し、そしてEn:={x| 0≤t⁢s⁢(x)≤fn⁢(x)}と置くと関数列の単調性からEn⊂En+1がわかりt<1から ⋃n∈ℕEn=Xを得る。そして

∫Xfn⁢𝑑μ≥∫Enfn⁢𝑑μ≥t⁢∫Ens⁢𝑑μ

が成り立ち、単関数の積分の定義と命題3から

limn→∞∫Ens⁢𝑑μ=limn→∞∑k=1mak⁢μ⁢(Sk∩En)=∑k=1mlimn→∞ak⁢μ⁢(Sk∩En)=∑k=1mak⁢μ⁢(Sk)=∫Xs⁢𝑑μ

となりこれから

limn→∞∫Xfn⁢𝑑μ≥t⁢∫Xs⁢𝑑μ

t↑1とし、

limn→∞∫Xfn⁢𝑑μ≥∫Xs⁢𝑑μ

sの上限をとり、

limn→∞∫Xfn⁢𝑑μ≥∫Xf⁢𝑑μ

を得る。 ∎

命題 15 (非負可測関数の積分の加法性).

非負可測関数f,gについて次が成り立つ

∫X(f+g)⁢𝑑μ=∫Xf⁢𝑑μ+∫Xg⁢𝑑μ
証明.

非負可測関数は下から単調に単関数で近似出来ることと単関数の積分の加法性と単調収束定理からすぐにわかる。 ∎

定理 16 (Fatouの補題).

X上の非負関数族{fn}n∈ℕについて

∫Xlim infn→∞fn⁢d⁢μ≤lim infn→∞∫Xfn⁢𝑑μ

が成り立つ。

証明.

自然数n∈ℕに対して

gn⁢(x)=infk≥nfk⁢(x)

と関数列{gn}n∈ℕを定義するとこの関数族は可測でかつ単調増加で

limn→∞gn⁢(x)=lim infn→∞fn⁢(x)

となるので単調収束定理より

∫Xlim infn→∞fn⁢d⁢μ=∫Xlimn→∞gn⁢d⁢μ=limn→∞∫Xgn⁢𝑑μ

となる。さてgnの定義よりk≥nならばgn≤fkとなるからk≥nならば

∫Xgn≤∫Xfk⁢𝑑μ

が成り立つから

∫Xgn≤infk≥n(∫Xfk⁢𝑑μ)

となり、n→∞として

limn→∞∫Xgn≤limn→∞infk≥n(∫Xfk⁢𝑑μ)=lim infn→∞∫Xfk⁢𝑑μ

が成り立つので

∫Xlim infn→∞fn⁢d⁢μ≤lim infn→∞∫Xfn⁢𝑑μ

∎

注意.

lim infn→∞an=limn→∞(infk≥nak)に注意する

定義 17 (一般の可測関数の積分と可積関数).

f=f+−f−と分解できるのでこれを用いて

∫Xf⁢𝑑μ=∫Xf+⁢𝑑μ−∫Xf−⁢𝑑μ

と定義する。

補題 18 (積分の三角不等式).
|∫Xf⁢𝑑μ|≤∫X|f|⁢𝑑μ
証明.
|∫Xf⁢𝑑μ|=|∫Xf+⁢𝑑μ−∫Xf−⁢𝑑μ|≤∫Xf+⁢𝑑μ+∫Xf−⁢𝑑μ=∫X(f++f−)⁢𝑑μ=∫X|f|⁢𝑑μ

∎

定理 19 (優収束定理、ルベーグの収束定理).

X上の関数族{fn}n∈ℕはlimn→∞fn=f(各点収束)であるとし可積分関数gが存在して

|fn|≤g

を満たすとする。この時fも可積分であり

limn→∞∫Xfn⁢𝑑μ=∫Xf⁢𝑑μ

が成立する。

証明.

仮定から

|f|≤g

がわかり

|f−fn|≤|f|+|fn|≤2⁢g

となるので

2⁢g−|f−fn|≥0

である。 Fatouの補題から

∫X2⁢g⁢𝑑μ≤lim infn→∞∫X2⁢g−|f−fn|⁢d⁢μ

で

∫X2⁢g−|f−fn|⁢d⁢μ=∫X2⁢g⁢𝑑μ−∫X|f−fn|⁢𝑑μ

更に

lim infn→∞(−∫X|f−fn|⁢𝑑μ)=−lim supn→∞∫X|f−fn|⁢𝑑μ

なので

∫X2⁢g⁢𝑑μ≤lim infn→∞∫X2⁢g−|f−fn|⁢d⁢μ=∫X2⁢g⁢𝑑μ−lim supn→∞∫X|f−fn|⁢𝑑μ

よって

lim supn→∞∫X|f−fn|⁢𝑑μ≤0

∫X|f−fn|⁢𝑑μ≥0なので結局

limn→∞∫X|f−fn|⁢𝑑μ=0

を得る。あとは積分の三角不等式を用いればわかる。 ∎

注意.

実は上で述べた優収束定理の証明は可測関数の引き算をしてるので不定形な演算をしてる可能性を除去しなければならないがfが可積関数ならμ⁢({f⁢(x)=∞})=0なので適切に修正出来る。証明が長くなるのが面倒だったのでここで注意するに留める。
また実数列{an}と実定数rについて

lim infn→∞(r−an)=r−lim supn→∞an

となることにも注意せよ。(数列の上極限、下極限がそれぞれその数列の最大の集積点、最小の集積点であることを鑑みればすぐにわかる。)

系 20 (有界収束定理).

測度空間(X,𝔐,μ)がμ⁢(X)<∞であり、 X上の可測関数列{fn}n∈ℕが有界つまり

∃M>0⁢∀x∈X⁢∀n∈ℕ⁢|fn⁢(x)|≤M

を充たすとき

limn→∞∫Xfn⁢𝑑μ=∫Xlimn→∞fn⁢d⁢μ

が成り立つ。

証明略.

∎

次に述べる2つの定理は優収束定理の系だが、単に「優収束定理より」とだけ述べられて使われることが多い。

定理 21 (優収束定理の系:極限).

(X,𝔐,μ)を測度空間、Tを距離空間とし、a∈Tとする。そして写像f:X×T→ℝに対してa∈Tの近傍Nと可積分関数ϕが存在して

∀x∈X⁢∀t∈N⁢|f⁢(x,t)|≤ϕ⁢(x)

を充たすとし、各x∈Xに対してlimt→af⁢(x,t)が存在すると仮定する。このとき、a∈Tに対して

limt→a∫Xf⁢(x,t)⁢𝑑μ⁢(x)=∫Xlimt→af⁢(x,t)⁢d⁢μ⁢(x)

が成り立つ。

証明.
F⁢(t)=∫Xf⁢(x,t)⁢𝑑μ

と置くさて 次の距離空間の極限に関する初等的な事実を思い出そう

事実.

距離空間Xから距離空間Yへの写像f:X→Yについて以下は同値

(1) limx→af⁢(x)=α
(2) limn→∞xn=a⁢か⁢つ⁢∀n∈ℕ⁢xn≠a⁢と⁢な⁢る⁢X⁢内⁢の⁢任⁢意⁢の⁢点⁢列⁢{xn}n∈ℕ⁢に⁢つ⁢い⁢て⁢limn→∞f⁢(xn)=α

これを念頭に置いてaという値を取らないaに収束する点列{tn}n∈ℕを任意に与え、

gn⁢(x)=f⁢(x,tn)

と置く。すると十分大きい番号Nについてn≥Nならばtn∈Nなのでn≥Nならば

∀x∈X|gn⁢(x)|≤ϕ⁢(x)

なので優収束定理から

limn→∞∫Xgn⁢(x)⁢𝑑μ=∫Xlimn→∞gn⁢(x)⁢d⁢μ

となるがlimn→∞gn⁢(x)=limt→af⁢(x,t)なので

limn→∞F⁢(tn)=limn→∞∫Xf⁢(x,tn)⁢𝑑μ⁢(x)=∫Xlimt→af⁢(x,t)⁢d⁢μ⁢(x)

{tn}は任意であったから

limt→aF⁢(t)=∫Xlimt→af⁢(x,t)⁢d⁢μ⁢(x)

Fに上で述べた事実を用いて結局

limt→a∫Xf⁢(x,t)⁢𝑑μ⁢(x)=∫Xlimt→af⁢(x,t)⁢d⁢μ⁢(x)

を得る。 ∎

注意.
系 22 (優収束定理の系:連続性).

fを上の定理と同じ仮定を充たすとし、更に各x∈Xについて

limt→af⁢(x,t)=f⁢(x,a)

が成り立つとする。このとき

limt→a∫Xf⁢(x,t)⁢𝑑μ⁢(x)=∫Xf⁢(x,a)⁢𝑑μ⁢(x)

つまり関数

F⁢(t)=∫Xf⁢(x,t)⁢𝑑μ⁢(x)

は点a∈Tで連続である。

証明.

定理21よりすぐに分かる。 ∎

定理 23 (優収束定理の系:微分).

(X,𝔐,μ)を測度空間、Iをユークリッド空間ℝの開集合とし、a∈Iとする。更に写像f:X×I→ℝは各t∈Iについて可積分で各x∈Xを固定する毎にf⁢(x,t)はtで偏微分可能であるとし、更に∂f∂tに対して点a∈Iの近傍Nと可積分関数ϕが存在して

∀x∈X⁢∀t∈N⁢|∂f∂t⁢(x,t)|≤ϕ⁢(x)

を充たすとするこのとき、

dd⁢t|t=a⁢∫Xf⁢(x,t)⁢𝑑μ⁢(x)=∫X∂f∂t⁢(x,a)⁢𝑑μ⁢(x)
証明.
F⁢(t)=∫Xf⁢(x,t)⁢𝑑μ⁢(x)

と置くと仮定からF:I→ℝである。(つまり無限大という値を取らない。)さて、h∈ℝが十分0に近いときにa+h∈Nである。そして平均値の定理より

f⁢(x,a+h)−f⁢(x,a)h=∂f∂t⁢(x,a+θx⁢h)

でhを十分小さく取れば∀x∈X⁢a+θx⁢h∈Nなので結局hが十分小さいとき

∀x∈X⁢|f⁢(x,a+h)−f⁢(x,a)h|≤ϕ⁢(x)

でh→0のときf⁢(x,a+h)−f⁢(x,a)h→∂f∂t⁢(x,a)なので定理21より

limh→0F⁢(a+h)−F⁢(a)h=limh→0∫Xf⁢(x,a+h)−f⁢(x,a)h⁢𝑑μ⁢(x)
=∫Xlimh→0f⁢(x,a+h)−f⁢(x,a)h⁢d⁢μ⁢(x)=∫X∂f∂t⁢(x,a)⁢𝑑μ⁢(x)

であり、

limh→0F⁢(a+h)−F⁢(a)h=dd⁢t|t=a⁢∫Xf⁢(x,t)⁢𝑑μ⁢(x)

なので定理がわかる。 ∎

3 零集合

このセクションでは零集合を定義し、その扱いを簡単に紹介する。

定義 24 (零集合).

測度空間(X,𝔐,μ)に置いてN⊂Xが零集合であるとは

μ⁢(N)=0

となること。

命題 25 (零集合の可算和).

測度空間(X,𝔐,μ)の部分集合族{Ai}i∈ℕ⊂𝔐 が零集合ばかりからなるとする。このとき⋃i∈ℕAiも零集合である。

証明.

測度の劣加法性から明らかである。

命題 26 (零集合上の積分).

Nを測度空間(X,𝔐,μ)の零集合とし、fを任意の可測関数とする。このとき

∫Nf⁢𝑑μ=0
証明.

fが単関数の場合に示せば他の場合は積分の定義からすぐに分かる。

命題 27 (可積分関数と零集合).

可積分関数fについて

μ⁢({f=+∞})=μ⁢({f=−∞})=0

つまり{f=+∞},{f=−∞}は零集合である。

証明.

{|f|=+∞}={f=+∞}∪{f=−∞}なのでf≥0のとき{f=+∞}が零集合であることを証明すれば良い。E={f=+∞}と置く。任意のn∈ℕについて

n⋅χE≤f

なので

μ⁢(E)≤1n⁢∫Xf⁢𝑑μ

だが、∫Xf⁢𝑑μ<∞なのでn→∞としてμ⁢(E)=0を得る。 ∎

定義 28 (殆ど至る所等しい).

測度空間(X,𝔐,μ)上の2つの可測関数f,gが殆ど至る所等しいとは集合{f≠g}が零集合となることである。f,gが殆ど至る所等しいことを

f=g⁢a.e.μ

だとか、μを省略して

f=g⁢a.e.

と書く。a.e.は”almost everywhere”の意味である。

定理 29.

以上で述べた補題、命題、定理群を「零集合を除いた」形に出来る。

実は可積分関数同士の和は零集合の概念を用いないと定義すらできない。なのでこのセクションを急造したわけである。

命題 30 (積分の線形性).

2つの可積分関数f,gとα,β∈ℝについて

∫X(α⁢f+β⁢g)⁢𝑑μ=α⁢∫Xf⁢𝑑μ+β⁢∫Xg⁢𝑑μ
証明.

証明は明らかであろう。 ∎

References

  • [1] W.Rudin,Real and Complex Analysis second edition,McGraw-Hill, 1974
  • [2] 伊藤清三,ルベーグ積分入門,数学選書4,裳華房,1963
  • [3] 梅垣壽春・大矢雅則・塚田真,測度・積分・確率,共立出版,1987
  • [4] 小谷眞一,測度と確率,岩波書店,2005