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可測空間と可測写像

一色三良(concious77)
HTML変換日:2026年7月26日

この文書では可測空間と可測写像の性質を調べる。

1 可測空間

定義 1 (σ加法族と可測空間).

集合Xの部分集合族𝔐がσ加法族であるとは

(1) A∈𝔐⟹X∖A∈𝔐
(2) A,B∈𝔐⟹A∩B∈𝔐
(3) {An}n∈ℕ⊂𝔐⟹⋃n∈ℕAn∈𝔐

を充たすこと。このとき組(X,𝔐)を可測空間などと言う。また𝔐に属する集合を可測空間(X,𝔐)の可測集合など呼ぶ。

注意.

{𝔐i}i∈Iをσ加法族の族とする。この時

⋂i∈I𝔐i

もσ加法族である。証明は容易である。

定義 2 (加法族の生成).

集合X上の部分集合族𝔄についてそれを含む最小のσ加法族を𝔄から生成されたσ加法族という。σ加法族𝔐についてその部分族𝔄⊂𝔐から生成されるσ加法族が𝔐に等しい時𝔄は𝔐を生成するという。

注意.

任意の部分集合族𝔄についてこれから生成されるσ加法族は確かに存在する。なぜなら

⋂𝔄⊂𝔐𝔐

がそれになるからである。

定義 3 (ボレル集合族).

位相空間(X,𝔒)上のボレル集合族とは開集合族𝔒から生成される最小のσ加法族のことであり、そのσ加法族に属する集合を位相空間Xのボレル集合と呼ぶ。集合Xのボレル集合族を𝔅⁢(X)で書く。特に文脈から明らかで紛れが無いときにはXを省略して𝔅と書くことにする。

注意.

σ加法族の定義の条件(1)からXの閉集合族𝔉から生成される最小のσ加法族とXのボレル加法族は一致する。 また、𝔅はBのフラクトゥールである。

定義 4 (可測写像).

可測空間(X,𝔐)から可測空間(Y,𝔑)への写像

f:(X,𝔐)→(Y,𝔑)

が可測写像であるとは

∀N∈𝔑⁢f−1⁢(N)∈𝔐

を充たすこと。どこの可測空間で可測であるかを強調して(𝔐,𝔑)可測写像と呼んだりもする。

fの逆像が和集合と共通部分を保つことから次の命題が成立する。

命題 5.

可測空間(Y,𝔑)について𝔄が𝔑を生成するとき

f:(X,𝔐)→(Y,𝔑)

が可測写像であることと

∀A∈𝔄⁢f−1⁢(A)∈𝔐

が成り立つことは同値である。

証明略.

∎

次の命題は後ほど多々用いられる事になるだろう。

命題 6.
f:(X,𝔐)→(Y,𝔑)

をXからYへの可測写像、

g:(Y,𝔑)→(Z,𝔏)

をYからZへの可測写像とする。このときfとgの合成

g∘f:(X,𝔐)→(Z,𝔏)

はXからZへの可測写像である。

証明.
(g∘f)−1⁢(A)=f−1⁢(g−1⁢(A))

からすぐわかる。 ∎

可測写像のうち、よく使われるものに名前をつける。最初はボレル関数から

定義 7 (ボレル関数).

位相空間Xから位相空間Yへの写像

f:X→Y

がXからYへのボレル関数、あるいは単にボレル関数であるとはfが可測空間(X,𝔅⁢(X))から(Y,𝔅⁢(Y))への可測写像となってる事である。同じことだが、命題5からYの開集合族を𝔒Yとするとき

∀O∈𝔒Y⁢f−1⁢(O)∈𝔅⁢(X)

が成り立つことと言っても良い。

注意.

特にXからYへの連続写像はXからYへのボレル関数になることに注意せよ。

次に定義する可測関数(関数と写像の違いに注意せよ)は測度論の主役となる写像である。

定義 8 (可測関数).

可測空間(X,𝔐)から(𝔼,𝔅⁢(𝔼))への可測写像を可測関数と呼ぶ。同じことだが、

∀B∈𝔅⁢(𝔼)⁢f−1⁢(B)∈𝔐

を充たすようなfのことである。

注意.

𝔅⁢(𝔼)は𝔼のボレル集合族、つまり𝔼の開集合族から生成されるσ加法族であっであったことを思い出そう。
値を∞しか取らないような関数も可測関数である。
可測関数と可測写像を見間違えないように注意せよ

補題 9.

Aをℝで稠密な集合とする。以下に述べる𝔼の集合族は𝔅⁢(𝔼)を生成する。

(1) {(a,+∞]|a∈ℝ}
(2) {[b,+∞]|b∈ℝ}
(3) {[−∞,c)|c∈ℝ}
(4) {[−∞,d]|d∈ℝ}
(5) {(a,+∞]|a∈A}
(6) {[b,+∞]|b∈A}
(7) {[−∞,c)|c∈A}
(8) {[−∞,d]|d∈A}
証明のスケッチ.
(a,+∞]=𝔼∖[−∞,a]=⋃n∈ℕ[a+1n,+∞]
[a,+∞]=𝔼∖[−∞,a)=⋂n∈ℕ(a−1n,+∞]
(a,b)=[−∞,b)∩(a,+∞]
[a,b]=[−∞,b]∩[a,+∞]

などからすぐわかる。 ∎

この補題と命題5を利用した 関数が可測であるかどうかを判定する便利な基準がある。

命題 10.

可測空間(X,𝔐)から𝔼への写像について以下は同値。ただしAはℝで稠密な集合とする。

(1) f⁢は⁢可⁢測
(2) ∀a∈ℝ⁢f−1⁢((a,+∞])∈𝔐
(3) ∀b∈ℝ⁢f−1⁢([b,+∞])∈𝔐
(4) ∀c∈ℝ⁢f−1⁢([−∞,c))∈𝔐
(5) ∀d∈ℝ⁢f−1⁢([−∞,d])∈𝔐
(6) ∀a∈A⁢f−1⁢((a,+∞])∈𝔐
(7) ∀b∈A⁢f−1⁢([b,+∞])∈𝔐
(8) ∀c∈A⁢f−1⁢([−∞,c))∈𝔐
(9) ∀d∈A⁢f−1⁢([−∞,d])∈𝔐
証明.

補題と命題5からすぐわかる。 ∎

この命題10は今後断りなく自在に使う。

例 11.

fを可測空間X上の可測関数である時以下の集合は可測集合。

(1) {a<f<b}:=f−1⁢((a,b))={x∈X|a<f⁢(x)<b}
(2) {a≤f<b}:=f−1⁢([a,b))={x∈X|a≤f⁢(x)<b}
(3) {a<f≤b}:=f−1⁢((a,b])={x∈X|a<f⁢(x)≤b}
(4) {a≤f≤b}:=f−1⁢([a,b])={x∈X|a≤f⁢(x)≤b}
(5) {f=a}:=f−1⁢({a})={x∈X|f⁢(x)=a}
(6) {a<f}:={a<f≤+∞}
(7) {a≤f}:={a≤f≤+∞}
(8) {f<b}:={−∞≤f<b}
(9) {f≤b}:={−∞≤f≤b}
(10) {f<g}:={x∈X|f⁢(x)<g⁢(x)}
(11) {f≤g}:={x∈X|f⁢(x)≤g⁢(x)}
(12) {f=g}:={x∈X|f⁢(x)=g⁢(x)}

(1)から(9)までが可測集合なのは自明である。後ろの3つが可測集合なのは

{f<g}=⋃r∈ℚ({f<r}∩{r<g})
{f≤g}=X∖{f>g}
{f=g}={f≤g}∩{f≥g}

からすぐわかる。

この{f≤b}などの記号は便利なので今後自在に用いる。

2 可測性を保つ演算

以下では可測関数同士の可測性を保つ演算を見ていく。まず最初に可測関数と極限の親和性を語る命題を示そう。

命題 12.

(X,𝔐)上の可算な可測関数の族{fn}n∈ℕについて

supn∈ℕfn,infn∈ℕfn

も(X,𝔐)上の可測関数となる。 よって

lim supn→∞fn,lim infn→∞fn

も(X,𝔐)上可測で各x∈Xについてlimn→∞fn⁢(x)が存在するなら

limn→∞fn

も(X,𝔐)上の可測関数となる。

証明.
lim supn→∞fn=infn∈ℕ(supk≥nfk)
lim infn→∞fn=supn∈ℕ(infk≥nfk)

なので前半を示せば後半はすぐに分かる。以下命題の後半を示す。
数列の一般論として

supn∈ℕan≤M⇔∀n∈ℕ⁢an≤M

なので

{supn∈ℕfn≤b}=⋂n∈ℕ{fn≤b}

で、𝔐は可算個の共通部分で閉じてるので

{supn∈ℕfn≤b}∈𝔐

よってsupn∈ℕfnは可測関数である。infn∈ℕfnについても同様である。 ∎

系 13.

位相空間Xから𝔼への連続関数列{fn}n∈ℕの極限関数

limn→∞fn

が存在するならそれはXから𝔼へのボレル関数である。

証明.

証明は明らかであろう。 ∎

命題 14.

f1,f2⁢⋯⁢fNをX上のN個の可測関数とする。このとき

F=∏i=1Nfi:X→𝔼N;x↦(f1⁢(x),f2⁢(x),⋯,fN⁢(x))

はXから𝔼Nへの可測写像となる。特に、Im⁢f⊂U⊂𝔼Nならば FはXからUへの可測写像になる。ただしUは𝔼Nからの相対位相を備え(U.𝔅⁢(U))という可測空間として考えている。

証明.

まず、

I=[−∞,a1]×[−∞,a2]×⋯×[−∞,aN]

という形の集合は𝔅⁢(𝔼N)を生成する。(各自確かめよ)そしてこの形をしたIについて

F−1⁢(I)=⋂i=1Nfi−1⁢([−∞,ai])

で仮定より各fi−1⁢([−∞,ai])は可測集合だからF−1⁢(I)も可測集合となり、Fは可測写像である事がわかる。 ∎

命題 15.

fをX上の可測関数とし、a∈𝔼とする時 a⁢fも可測関数となる。

証明.

a=0の時は明らか。a∈(0,+∞)のときは

{c<a⁢f}={ca<f}∈𝔐

から分かる。a∈(−∞,0)のときも不等号の向きが変わるだけでこれと同様である。
a=+∞のときはa⁢fは−∞,0,+∞の値しか取らず、

{a⁢f=−∞}={f<0}
{a⁢f=0}={f=0}
{a⁢f=+∞}={f>0}

なので可測性は明らか、a=−∞のときも同様。 ∎

事実 16.

写像

ϕ:𝔼∖{0}→𝔼

を

ϕ⁢(x)=1x

と定義すると、ϕは連続写像である。

命題 17.

fをX上の可測関数とし、{f=0}=Øとする。このとき 1fも可測関数となる。

証明.

直近で述べた事実と命題6[可測写像の合成は可測写像]からわかる。 ∎

事実 18.

D=𝔼2∖{(−∞,+∞),(+∞,−∞)}と置き、

Φ:D→𝔼

を

Φ⁢(x,y)=x+y

と定義するとΦは連続関数である。

命題 19.

f,gをX上の可測関数とする時f+gは不定形な演算を行わない限りにおいて可測関数となる。

証明.

不定形な演算を行わないとは

{f=+∞}∩{g=−∞}=Ø,{f=−∞}∩{g=+∞}=Ø

となることであるつまり

(f⁢(x),g⁢(x))∈D=𝔼2∖{(−∞,+∞),(+∞,−∞)}

なので直近の事実のΦとf⁢Π⁢gが合成できて、

Φ∘(f⁢Π⁢g)=f+g

であり、命題14からf⁢Π⁢gは可測であり、命題6[可測写像の合成は可測写像]からこれが可測関数であることがわかる。 ∎

事実 20 (積演算はボレル関数).
G:𝔼2→𝔼

を

G⁢(x,y)=x⁢y

と定義すると、Gは連続ではない。しかし、𝔼2から𝔼への連続関数列{gn}n∈ℕが存在して、各点(x,y)∈𝔼2毎に、

limn→+∞gn⁢(x,y)=G⁢(x,y)=x⁢y

と、各点収束する。つまりGは連続関数列の極限となるので、系13よりボレル関数である。

命題 21.

f,gをX上の可測関数とする時 f⁢gも可測関数となる。

証明.

直近の事実と命題6[可測写像の合成は可測写像]と命題14からすぐに分かる。 ∎

命題 22.

Eを可測集合とするときにその特性関数

χE

は可測関数である。

証明.

特性関数は0か1しか値を取り得ずEが可測集合ならX∖Eも可測集合であることからわかる。 ∎

命題 23.

f,gをXの可測関数とする時max⁡(f,g),min⁡(f,g)も可測関数となる。

証明.

sup(f,g)=max⁡(f,g)と命題12から明らか。minも同様。 ∎

別証明.
A={f≤g},B={f>g}

と置くとこれは可測集合であり、先の命題群からg⋅χA,f⋅χBは可測関数である。そして、この2つは和を考えるとき不定形な演算をしないので

g⋅χA+f⋅χB

も可測関数である。定義から明らかにこれはmax⁡(f,g)に等しいので命題は成り立つ。 ∎

系 24 (可測関数関数の分解).

可測関数fについて

f+=max⁡(f,0),f−=max⁡(−f,0)

と置くとき、

f=f+−f−

である。つまり一般の可測関数は非負可測関数の差として表すことが出来る。

証明.

自明 ∎

以上で可測性を保つ演算の紹介は終わりである。

3 単関数と可測関数

定義 25 (単関数).

非負可測関数sが単関数であるとはsの像s⁢(X)が[0,+∞)の中の有限集合となることである。
取りうる値が有限個の実数しか無い非負可測関数と言っても良い

補題 26.

単関数sは互いに交わらない有限個の可測集合E1,E2⁢⋯⁢Enと非負実数a1,a2⁢⋯⁢anをつかって

s=∑k=1ak⁢χEk

と書ける。逆にこのように書ける関数は単関数である。

証明.

sが取りうる値を{a1,a2⁢⋯⁢an}として 各{s=ak}=s−1⁢(ak)は可測集合になるのでEk=s−1⁢(ak)とすれば良い。逆は明らか。 ∎

定理 27.

任意の非負可測関数f≥0について単調増加な単関数の族{sn}n∈ℕが存在して

limn→∞sn⁢(x)=f⁢(x)⁢(各⁢点⁢収⁢束)

が成り立つ。ちなみに単調増加な関数族がfに各点収束してることをsn⁢(x)↑f⁢(x)とも書き表す。

証明.

各n∈ℕについて

En,i={i−12n≤f<i2n}
Fn={n≤f}

と定義する。ただしiは1≤i≤n⁢2nの範囲を動く。そしてsnを

sn⁢(x)=∑i=1n⁢2ni−12n⁢χEn,i+n⁢χFn

と定義すると単調性がすぐわかり、明らかにsn≤fそしてx∈{f=+∞}なら∀n∈ℕ⁢x∈Fn であるからsn⁢(x)→+∞そしてx∈{f<+∞}ならばnが十分大きいときx∈En,i なので

i−12n≤f⁢(x)<i2n,sn⁢(x)=i−12n

であるからこのとき

sn⁢(x)≥f⁢(x)−12n

なのでsn⁢(x)→f⁢(x)である。 ∎

References

  • [1] W.Rudin,Real and Complex Analysis second edition,McGraw-Hill, 1974
  • [2] 伊藤清三,ルベーグ積分入門,数学選書4,裳華房,1963
  • [3] 梅垣壽春・大矢雅則・塚田真,測度・積分・確率,共立出版,1987
  • [4] 小谷眞一,測度と確率,岩波書店,2005