可測空間と可測写像
この文書では可測空間と可測写像の性質を調べる。
1 可測空間
定義 1 (加法族と可測空間).
集合の部分集合族が加法族であるとは
| (1) | |||
| (2) | |||
| (3) |
を充たすこと。このとき組を可測空間などと言う。またに属する集合を可測空間の可測集合など呼ぶ。
注意.
を加法族の族とする。この時
も加法族である。証明は容易である。
定義 2 (加法族の生成).
集合上の部分集合族についてそれを含む最小の加法族をから生成された加法族という。加法族についてその部分族から生成される加法族がに等しい時はを生成するという。
注意.
任意の部分集合族についてこれから生成される加法族は確かに存在する。なぜなら
がそれになるからである。
定義 3 (ボレル集合族).
位相空間上のボレル集合族とは開集合族から生成される最小の加法族のことであり、その加法族に属する集合を位相空間のボレル集合と呼ぶ。集合のボレル集合族をで書く。特に文脈から明らかで紛れが無いときにはを省略してと書くことにする。
注意.
加法族の定義の条件からの閉集合族から生成される最小の加法族とのボレル加法族は一致する。 また、はのフラクトゥールである。
定義 4 (可測写像).
可測空間から可測空間への写像
が可測写像であるとは
を充たすこと。どこの可測空間で可測であるかを強調して可測写像と呼んだりもする。
の逆像が和集合と共通部分を保つことから次の命題が成立する。
命題 5.
可測空間についてがを生成するとき
が可測写像であることと
が成り立つことは同値である。
証明略.
∎
次の命題は後ほど多々用いられる事になるだろう。
命題 6.
をからへの可測写像、
をからへの可測写像とする。このときとの合成
はからへの可測写像である。
証明.
からすぐわかる。 ∎
可測写像のうち、よく使われるものに名前をつける。最初はボレル関数から
定義 7 (ボレル関数).
位相空間から位相空間への写像
がからへのボレル関数、あるいは単にボレル関数であるとはが可測空間からへの可測写像となってる事である。同じことだが、命題5からの開集合族をとするとき
が成り立つことと言っても良い。
注意.
特にからへの連続写像はからへのボレル関数になることに注意せよ。
次に定義する可測関数(関数と写像の違いに注意せよ)は測度論の主役となる写像である。
定義 8 (可測関数).
可測空間からへの可測写像を可測関数と呼ぶ。同じことだが、
を充たすようなのことである。
注意.
はのボレル集合族、つまりの開集合族から生成される加法族であっであったことを思い出そう。
値をしか取らないような関数も可測関数である。
可測関数と可測写像を見間違えないように注意せよ
補題 9.
をで稠密な集合とする。以下に述べるの集合族はを生成する。
| (1) | |||
| (2) | |||
| (3) | |||
| (4) | |||
| (5) | |||
| (6) | |||
| (7) | |||
| (8) |
証明のスケッチ.
などからすぐわかる。 ∎
この補題と命題5を利用した 関数が可測であるかどうかを判定する便利な基準がある。
命題 10.
可測空間からへの写像について以下は同値。ただしはで稠密な集合とする。
| (1) | |||
| (2) | |||
| (3) | |||
| (4) | |||
| (5) | |||
| (6) | |||
| (7) | |||
| (8) | |||
| (9) |
証明.
補題と命題5からすぐわかる。 ∎
この命題10は今後断りなく自在に使う。
例 11.
を可測空間上の可測関数である時以下の集合は可測集合。
| (1) | |||
| (2) | |||
| (3) | |||
| (4) | |||
| (5) | |||
| (6) | |||
| (7) | |||
| (8) | |||
| (9) | |||
| (10) | |||
| (11) | |||
| (12) |
からまでが可測集合なのは自明である。後ろの3つが可測集合なのは
からすぐわかる。
このなどの記号は便利なので今後自在に用いる。
2 可測性を保つ演算
以下では可測関数同士の可測性を保つ演算を見ていく。まず最初に可測関数と極限の親和性を語る命題を示そう。
命題 12.
上の可算な可測関数の族について
も上の可測関数となる。 よって
も上可測で各についてが存在するなら
も上の可測関数となる。
証明.
なので前半を示せば後半はすぐに分かる。以下命題の後半を示す。
数列の一般論として
なので
で、は可算個の共通部分で閉じてるので
よっては可測関数である。についても同様である。 ∎
系 13.
位相空間からへの連続関数列の極限関数
が存在するならそれはからへのボレル関数である。
証明.
証明は明らかであろう。 ∎
命題 14.
を上の個の可測関数とする。このとき
はからへの可測写像となる。特に、ならば はからへの可測写像になる。ただしはからの相対位相を備えという可測空間として考えている。
証明.
まず、
という形の集合はを生成する。(各自確かめよ)そしてこの形をしたについて
で仮定より各は可測集合だからも可測集合となり、は可測写像である事がわかる。 ∎
命題 15.
を上の可測関数とし、とする時 も可測関数となる。
証明.
の時は明らか。のときは
から分かる。のときも不等号の向きが変わるだけでこれと同様である。
のときははの値しか取らず、
なので可測性は明らか、のときも同様。 ∎
事実 16.
写像
を
と定義すると、は連続写像である。
命題 17.
を上の可測関数とし、とする。このとき も可測関数となる。
証明.
直近で述べた事実と命題6[可測写像の合成は可測写像]からわかる。 ∎
事実 18.
と置き、
を
と定義するとは連続関数である。
命題 19.
を上の可測関数とする時は不定形な演算を行わない限りにおいて可測関数となる。
証明.
事実 20 (積演算はボレル関数).
命題 21.
を上の可測関数とする時 も可測関数となる。
命題 22.
を可測集合とするときにその特性関数
は可測関数である。
証明.
特性関数はかしか値を取り得ずが可測集合ならも可測集合であることからわかる。 ∎
命題 23.
をの可測関数とする時も可測関数となる。
証明.
と命題12から明らか。も同様。 ∎
別証明.
と置くとこれは可測集合であり、先の命題群からは可測関数である。そして、この2つは和を考えるとき不定形な演算をしないので
も可測関数である。定義から明らかにこれはに等しいので命題は成り立つ。 ∎
系 24 (可測関数関数の分解).
可測関数について
と置くとき、
である。つまり一般の可測関数は非負可測関数の差として表すことが出来る。
証明.
自明 ∎
以上で可測性を保つ演算の紹介は終わりである。
3 単関数と可測関数
定義 25 (単関数).
非負可測関数が単関数であるとはの像がの中の有限集合となることである。
取りうる値が有限個の実数しか無い非負可測関数と言っても良い
補題 26.
単関数は互いに交わらない有限個の可測集合と非負実数をつかって
と書ける。逆にこのように書ける関数は単関数である。
証明.
が取りうる値をとして 各は可測集合になるのでとすれば良い。逆は明らか。 ∎
定理 27.
任意の非負可測関数について単調増加な単関数の族が存在して
が成り立つ。ちなみに単調増加な関数族がに各点収束してることをとも書き表す。
証明.
各について
と定義する。ただしはの範囲を動く。そしてを
と定義すると単調性がすぐわかり、明らかにそしてなら であるからそしてならばが十分大きいとき なので
であるからこのとき
なのでである。 ∎
References
- [1] W.Rudin,Real and Complex Analysis second edition,McGraw-Hill, 1974
- [2] 伊藤清三,ルベーグ積分入門,数学選書4,裳華房,1963
- [3] 梅垣壽春・大矢雅則・塚田真,測度・積分・確率,共立出版,1987
- [4] 小谷眞一,測度と確率,岩波書店,2005