拡張された実数
この文書では拡張された実数を定義し、その性質を調べる。
定義 1 (拡張された直線).
実直線にに属さない異なる点を付け加えた集合をと書き、拡張された実数、または拡張された直線という。つまり、集合として
である。この集合に順序、演算、位相を順次定義していく。
定義 2 (の順序).
の順序は任意のについてと直感通りに定義する。この順序によりは最小値、最大値を備え、線型 111順序集合として線型であるということである。つまり任意の二元について のいずれかが成り立つということである。 で完備 222線型順序集合として完備ということである。つまり任意の部分集合に上限と下限が存在するということである。 な順序集合となる。この事を確かめるのは簡単な割に長くなるので省略する。この順序を根拠にして、
と書いたりもする。
定義 3 (の演算).
の演算を、の元同士の演算はそのままに まず和を
| (1) | |||
| (2) | |||
| (3) |
と拡張する。複合同順である。そして積を
| (4) | |||
| (5) | |||
| (6) |
と拡張する。複合同順である。ではなども主張していることに注意しよう。さて次にに対してという新しい演算をならと定義し、ならば
| (7) |
と定義する。以上の拡張された演算に於いても は定義しない。333 と定義しても良かったが、考えることが増えるので慣習通り未定義と言うことにした。このような未定義な演算を不定形な演算と言う。
注意.
はの逆数と言う意味ではないまた、に於いてはもはや
が成り立たないことに注意せよ。例えばのとき、そもそも左辺は定義されていない。
定義 4 (の位相).
に位相を定義するのだが、先に定義したの順序を用いて順序位相をに定義する。つまり
の形の集合全体からなる集合族を準開基とする位相である。同じ事だが
として、
の形全体の集合 444開区間と呼ぶ 全体からなる集合族を開基とする位相である。
さて、以降はこのの性質を簡単に調べていく。
定理 5 (上の連続関数のへの拡大).
写像は連続であるとし、
ならば、を
と定義するとこれは連続である。また、の拡張はこの関数に限る。
証明のスケッチ.
がすべてに属してるならこれはの範囲で問題無く処理出来る。それ以外の場合、 例えばでのときつまりのとき、この式の意味は
だが、という形の集合全体はに於いての基本近傍系を成してるので連続的に拡張出来ることはわかる。他の場合も同様である。 ∎
定理 6 (の位相).
はの有界閉区間と位相同型である。よってはコンパクト距離空間である。
証明のスケッチ.
の有界閉区間はどれも位相同型なので例えばとが位相同型であることを示す。まず双曲線関数は連続で、
である。これから簡単に逆関数が存在する事がわかり、
である。さて
なのではへと拡大する。 そして、
なのでへと拡張する。簡単にわかるようには互いに逆写像なので とは同型である。 ∎
以下、の演算と位相の関わりを見るのだが、 距離空間の間の写像の連続性を点列で特徴付ける次の事実を思い出そう。
事実 7.
距離空間から距離空間への写像について以下は同値
| (1) | |||
| (2) |
命題 8.
写像
を
と定義すると、は連続写像である。
証明.
と定理5よりわかる。 ∎
命題 9.
と置き、
を
と定義するとは連続関数である。
証明.
事実7を用いる。についての連続性は明らかなので、が無限大の値を取りうる場合を考える。
の場合:となる点列を考えたとき、十分大きい番号では有界となる。つまりならば
となるが存在するので
となり、なのでこの点での連続性がわかる。やそしての場合も同様である。の定義から残るはとの場合だが、ならばからわかる。 ∎
注意.
わざわざ定義域をとしたのは
という不定形な演算を避けるためである。
次に積について調べるが、積は連続にはならない、しかし連続関数で近似できると言う性質を持っている。 以下の拡張された実数の積の性質の証明のために、実数の積の連続性を援用しよう。
事実 10 (実数の積の連続性).
にを対応させる写像は連続
拡張された実数の積は先の2つの場合と違って連続にはならないが、連続関数列の極限になっていると言う性質がある。いまだ定義されてない言葉を使うと、積はボレル写像なのである。
命題 11.
を
と定義すると、は連続ではない。しかし、からへの連続関数列が存在して、各点毎に、
となる。つまりはに各点収束する。
証明.
が連続出ないことは、でにもかかわらずであることからわかる。後半を示そう。まずからへの連続関数列を
と定義するとこれは確かに連続で各点を固定する毎にとなる。そしてを
と定義すると、はの値しか取り得ないので事実10からは連続関数となり、 なので各点を固定する毎に
となる。これで命題の主張が全て示された。
∎