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フィルターとコンパクト性

一色三良(concious77)
HTML変換日:2026年7月26日
定義 1 (フィルター).

集合Xの部分集合族𝔉がX上のフィルターであるとは

(1) X∈𝔉
(2) A∈𝔉⁢か⁢つ⁢A⊂B⇒B∈𝔉
(3) A,B∈𝔉⇒A∩B∈𝔉

を充たすことを言う。さらにフィルターが

(4) Ø∉𝔉

を充たすとき、そのフィルターを真フィルター111真はチェンジ!!とは読まないだとか固有フィルターと言う。
(4)の条件はフィルターがXの部分集合全体2Xにはならないための条件である。その場合を省くのは、つまらないからである。またこの(4)と(3)の条件から真フィルターの元は有限交叉性、つまり真フィルターの有限個の交わりは空にならないのである。またX上のフィルター全体の集合を

𝔉⁢𝔦⁢𝔩⁢𝔱⁢𝔢⁢𝔯⁢(X)

で表すことにする。

このフィルターと言う命名はカメラのレンズの”絞り”から来ているらしい。本当なのかどうかは疑わしいが、段々とと小さくなっていく感覚を表していると思われる。 条件(2)よりフィルターの何かしらの元を包含するような集合はそのフィルターの元になってしまうのである。フィルターの元は包含関係に関して小さいモノの方が本質的なのである。その本質的な部分を抜き出したのがフィルター基の概念である。

定義 2 (フィルター基).

集合Xの部分集合族𝔅がX上のフィルター基底であるとは

(1) 𝔅≠Ø
(2) ∀B1,B2∈𝔅⁢∃B3∈𝔅⁢B3⊂B1∩B2

が成立する事を言う。さらにフィルター基底が

(3) Ø∉𝔅

うを充たすとき真フィルター基底と呼ぶ。 フィルター基底 𝔅を用いて

𝔉={F|∃B∈𝔅⁢B⊂F}

とすると𝔉はフィルターとなる。これを𝔅から生成されたフィルターという。条件(3)は𝔅から生成されるフィルターが真フィルターになるための条件である。

フィルター基以外にもフィルターを生成する方法はある。つまりそれは只の集合族から生成されるフィルターである。しかしそれが真フィルターを定めるかどうかは分からない。真フィルターは有限交叉性を持つので最低限その集合族の有限交叉性は仮定しなければならぬ。つまり次の定理が成り立つ。

定理 3.

X⁢の⁢空⁢で⁢な⁢い⁢部⁢分⁢集⁢合⁢族⁢𝔐⁢に⁢つ⁢い⁢て⁢こ⁢れ⁢が

∀A,B∈𝔐⁢A∩B≠Ø

を充たすとする。このような族を有限交叉族という。このとき𝔐⁢を⁢含⁢む⁢フ⁢ィ⁢ル⁢タ⁢ー⁢で⁢最⁢小⁢の⁢も⁢の⁢が⁢存⁢在⁢す⁢る⁢。⁢つ⁢ま⁢り⁢そ⁢れ⁢は⁢𝔐⁢の⁢元⁢を⁢有⁢限⁢回⁢共⁢通⁢部⁢分⁢を⁢と⁢っ⁢た⁢よ⁢う⁢な⁢集⁢合⁢を⁢含⁢むような集合全体である。要するに

𝔅={⋂f⁢i⁢n⁢i⁢t⁢eBi|Bi∈𝔐}

がフィルター基となることを行っているのである。

証明略.

∎

有限交叉族という言葉は今後断りなく自在に用いる。
以フィルターの例を挙げる。

例 4 (近傍フィルター).

位相空間Xの点a∈Xの近傍形全体𝔑⁢(a)は真フィルターとなっている。これは近傍系の性質より明らかである。

例 5 (切片フィルター).

集合Xの部分集合A⊂Xについて

𝔉A={F∈2X|A⊂F}

はフィルターとなる。これは有限交叉族{A}から生成されるフィルターである。このフィルターをAを切片とするフィルターと言う。A≠Øである限り、切片フィルターは真フィルターである。

定義 6 (フィルターの細粗).

2つのフィルター𝔉,𝔊∈𝔉⁢𝔦⁢𝔩⁢𝔱⁢𝔢⁢𝔯⁢(X)が

𝔉⊂𝔊

となっているとき𝔉は𝔊より粗い。または、𝔊は𝔉より細かいと言う。

詳しくは説明しないが、𝔉より細かいフィルターは点列で言うところの部分列に対応している。

定義 7 (像フィルター).

写像f:X→Yと𝔉∈𝔉⁢𝔦⁢𝔩⁢𝔱⁢𝔢⁢𝔯⁢(X)が与えられたときf⁢(A∩B)⊂f⁢(A)∩f⁢(B)より

{f⁢(F)|F∈𝔉}

はフィルター基底となるがこれから生成されるフィルターを𝔉のfによる像フィルターと言い象徴的な記号

f⁢[𝔉]

で表す。

定義 8 (フィルターの結び).
222双対的にフィルターの交わりが定義されるが、特にこの文書で用いないので定義しない。定義はともかく結果的には 𝔉∧𝔊=𝔉∩𝔊 となる。

𝔉⁢𝔦⁢𝔩⁢𝔱⁢𝔢⁢𝔯⁢(X)に包含関係で順序を入れて順序集合と見た時(つまりフィルターの細粗という順序関係で見たとき)の二元集合{𝔉,𝔊}の最小上界、つまりsup{𝔉,𝔊}を𝔉と𝔊の結びといい

𝔉∨𝔊

と書く。さて 2つの真フィルター𝔉,𝔊∈𝔉⁢𝔦⁢𝔩⁢𝔱⁢𝔢⁢𝔯⁢(X)が

∀F∈𝔉⁢∀G∈𝔊⁢F∩G≠Ø

を充たすとき

{F∩G|F∈𝔉⁢G∈𝔊}

はフィルター基底となるが、これから生成される真フィルターは𝔉∨𝔊となる。この条件が充たされないとき、

𝔉∨𝔊=2X

となる。当たり前だが𝔉∨𝔊は𝔉と𝔊の両方より細かい。

定義 9 (極大フィルター).

真フィルター𝔉∈𝔉⁢𝔦⁢𝔩⁢𝔱⁢𝔢⁢𝔯⁢(x)が極大フィルターであるとは

∀𝔊∈𝔉⁢𝔦⁢𝔩⁢𝔱⁢𝔢⁢𝔯⁢(X)⁢[𝔉⊂𝔊⊂2X⟹(𝔉=𝔊)∨(𝔊=2X)]

となること。

注意.

極大フィルターは必ず真フィルターであると定める。2Xを考えても仕方ないからである。

定理 10.

真フィルター𝔉∈𝔉⁢𝔦⁢𝔩⁢𝔱⁢𝔢⁢𝔯⁢(X)について以下は同値。

(1) 𝔉⁢は⁢極⁢大
(2) ∀A⊂X⁢[(∀F∈𝔉⁢A∩F≠Ø)⟹A∈𝔉]
(3) ∀A⊂X⁢(A∈𝔉)∨(X∖A∈𝔉)
(4) ∀A,B⊂X⁢[A∪B∈𝔉⟹(A∈𝔉)∨(B∈𝔉)]

(1)⟹(2)⁢(2)⟹(3)⁢(3)⟹(4)⁢(4)⟹(3)⁢(3)⟹(1)の順に証明する。

証明.

((1)⟹(2))
∀F∈𝔉⁢A∩F≠Øを充たすAを任意に与える。すると𝔉∪{A}は有限交差族になっており、真フィルター生成する。そのフィルターを𝔉A と置くと条件から𝔉⊂𝔉AでA∈𝔉A,Ø∉𝔉Aで𝔉Aはフィルターとなっている。よって𝔉の極大性から𝔉=𝔉Aよって特にA∈𝔉
((2)⟹(3))
任意のA⊂Xについて

(∀F∈𝔉⁢A∩F≠Ø)∨(∀G∈𝔉⁢(X∖A)∩G≠Ø)

が成り立つことが言えれば(2)から(3)はすぐに従う。さてもしこれが成り立たないとすると

(∃F∈𝔉⁢A∩F=Ø)∧(∃G∈𝔉⁢(X∖A)∩F=Ø)

が成り立つが、このような(F,G)を一組固定すると

F⊂X∖A,G⊂A

となるがF∩G=Øとなり、これは𝔉が真フィルターであることに反する。
((3)⟹(4))
(4)の対偶を示す。

A∉𝔉∧B∉𝔉

とすると(3)から

X∖A∈𝔉,X∖B∈𝔉

なので

X∖(A∪B)=(X∖A)∩(X∖B)∈𝔉

となり、𝔉が真フィルターであることからA∪B∉𝔉つまり

A,B⊂X⁢[(A∉𝔉)∧(B∉𝔉)⟹A∪B∉𝔉]

が示されたので(4)が成り立つ。 ((4)⟹(3))
(X∖A)∪A=Xから明らか。
((3)⟹(1))
真フィルター𝔉が(3)を充たしフィルター𝔊との間に

𝔉⊊𝔊

の関係があるとしよう。このときG∈𝔊∖𝔉となるGが存在するが𝔉が(2)を満たしているので

X∖G⊂𝔉

よってX∖G∈𝔊がなりたち結局

G∈𝔊,X∖G∈𝔊

なので𝔊=2X。よって𝔉は極大フィルターである。 ∎

定理 11 (極大フィルターの補題).

X上の真フィルターを任意に与えるとそれより細かいX上の極大フィルターが存在する。

証明.

Zornの補題を用いる。真フィルターを任意に与え𝔄とし

ℱ⁢(𝔄)={𝔉∈𝔉⁢𝔦⁢𝔩⁢𝔱⁢𝔢⁢𝔯⁢(X)|𝔄⊂𝔉⁢𝔉⁢は⁢真⁢フ⁢ィ⁢ル⁢タ⁢ー}

と置くと𝔄を含む 極大フィルターは(ℱ⁢(𝔄),⊂)の極大元になってることに注意しよう。さて𝔄∈ℱ⁢(𝔄)なのでℱ⁢(𝔄)は空ではない。そしてℱ⁢(𝔄)の線型部分順序集合を任意に与え𝒮とする時⋃𝒮∈ℱ⁢(𝔄)を示そう。まず

⋃𝒮≠Ø

はすぐわかる。そして

A∈⋃𝒮,A⊂B

とすると、A∈𝔛となる𝔛∈⋃𝒮が存在し、𝔛はフィルターなのでA⊂Bから

B∈𝔛

を得る。
次に

A,B∈⋃𝒮

とするとA∈𝔛,B∈𝔜となる𝔛,𝔜∈𝒮が存在する。𝒮は線型順序集合なので𝔛と𝔜の間に大小関係があるが𝔛⊂𝔜としても一般性を失わない。このときA,B∈𝔜なので

A∩B∈𝔜

よってA∩B∈⋃𝒮
𝒮の任意の元はØを含んでいないので

Ø∉⋃𝒮

以上より⋃𝒮は真フィルターであり、𝔄⊂⋃𝒮なので⋃𝒮∈ℱ⁢(𝔄)よって𝒮には上界が存在するのでZornの補題から極大元を持つ。それが求める極大フィルターである。 ∎

注意.

よくこの命題を極大フィルターが存在するなどと手短に言うが、それは厳密には誤りである。なぜなら1点{x}の切片フィルターは極大フィルターなので、極大フィルターは必ず存在するからである。真フィルターを与えたときにそれより細かい極大フィルターが存在する事が大事である。

定理 12.

極大フィルターの像フィルターは極大である。

証明.

Xの極大フィルターを𝔉としf:X→Yによる像フィルターを考える。 A⊂Yを任意に与えると𝔉が極大フィルターであることから

(f−1⁢(A)∈𝔉)∨(X∖f−1⁢(A)∈𝔉)

が成り立つ。f−1⁢(A)∈𝔉ならばA∈f⁢[ℱ]であり、X∖f−1⁢(A)∈𝔉ならば f−1⁢(Y∖A)=X∖f−1⁢(A)なのでf−1⁢(X∖A)∈𝔉よってX∖A∈f⁢[𝔉]ここでf⁢(f−1⁢(S))⊂Sを用いた。以上から任意のA∈Yについて

(A∈f⁢[𝔉])∨(Y∖A∈f⁢[𝔉])

なのでf⁢[𝔉]は極大フィルターである。 ∎

定義 13 (フィルターの収束).

位相空間X上のフィルター𝔉がXの点aに収束するとは

𝔑⁢(a)⊂𝔉

が成り立つこと。ここで𝔑⁢(a)はaの近傍フィルターである。

定義 14 (フィルターの接触点).

位相空間X上のフィルター𝔉の接触点とは

⋂F∈𝔉F¯

に属する点のことである。

以下の命題からわかるようにフィルターの接触点とはそのフィルターが収束する「可能性」のある点である。

命題 15.

位相空間X上の真フィルター𝔉がlim𝔉=aとなるなら、aは𝔉の接触点である。 逆にaが𝔉の接触点なら𝔉より細かい真フィルター𝔊が存在してlim𝔊=aとなる。

証明.

前半は𝔉が真フィルターであることと

lim𝔉=a⇔𝔑⁢(a)⊂𝔉

から明らかである。後半は

𝔊=𝔉∨𝔑⁢(a)

と置けば良い。 ∎

フィルターとコンパクト性の特徴付け

定義 16 (コンパクト空間).

位相空間XがコンパクトであるとはXの任意の開被覆に有限部分被覆が存在すること

命題 17.

(Xがコンパクト)⇔(Xの閉集合からなる任意の集合族ℱが有限交叉族ならば⋂ℱ≠Ø)

証明.

(⟹)
Xの閉集合からなる集合族ℱが

⋂ℱ=Ø

を満たすと仮定する。そして

𝒰={X∖F|F∈𝔉}

と定義するとこの集合族の元は開集合で⋂ℱ=Øより⋃𝒰=Xとなる、つまり𝒰はXの開被覆である。いまXはコンパクトであったから𝒰の有限部分被覆

{U1,U2,⋯⁢Un}

を持つ⋃i=1nUi=Xより⋂i=1n(X∖Ui)=Øとなり、

{X∖U1,X∖U2,⋯⁢X∖Un}⊂ℱ

なので、結局、ℱの有限部分族で交叉が空となるものが存在する。つまりXがコンパクトなら (Xの閉集合からなる任意の集合族ℱが有限交叉族ならば⋂ℱ≠Ø)の対偶が成り立つということになるので定理の(⟹)が示された。
(⟸)
𝒰をXの開被覆とする。このとき

ℱ={X∖U|U∈𝒰}

と置くと⋂ℱ=Øとなる。ので(Xの閉集合からなる任意の集合族ℱが有限交叉族ならば⋂ℱ≠Ø)の対偶からℱの有限部分族

{F1,F2,⋯⁢Fn}

が存在して⋂i=1nFi=Øとなる。そこで

{X∖F1,X∖F2,⋯⁢X∖Fn}

と置けばこれは𝒰の有限部分族で⋃i=1n(X∖Fi)=Xを充たす。つまりXはコンパクト。 ∎

以下この命題17を自在に断りなく用いる。

定理 18 (コンパクト性とフィルター).

以下は同値

(1) X⁢は⁢コ⁢ン⁢パ⁢ク⁢ト
(2) X⁢上⁢の⁢任⁢意⁢の⁢真⁢フ⁢ィ⁢ル⁢タ⁢ー⁢に⁢対⁢し⁢、⁢そ⁢れ⁢よ⁢り⁢細⁢か⁢い⁢真⁢フ⁢ィ⁢ル⁢タ⁢ー⁢で⁢収⁢束⁢す⁢る⁢も⁢の⁢が⁢存⁢在⁢す⁢る⁢。
(3) X⁢上⁢の⁢任⁢意⁢の⁢極⁢大⁢フ⁢ィ⁢ル⁢タ⁢ー⁢は⁢収⁢束⁢す⁢る⁢。
証明.

(1)⟹(2),(2)⟹(3),(3)⟹(1)の順に示す。
((1)⟹(2))
X上の真フィルターを𝔉とする。𝔉は真フィルターなので特に有限交叉族であり、故に

{F¯|F∈𝔉}

は有限交叉族であるからコンパクト性から

⋂F∈𝔉F¯≠Ø

ここから点aを適当にとると、aは各Fの触点になってるからaの近傍フィルター𝔑⁢(a)は

∀F∈𝔉⁢∀N∈𝔑⁢(a)⁢F∩N≠Ø

を充たし、𝔉∨𝔑⁢(a)が定義できてこれは𝔉より細かく𝔑⁢(a)より細かいのでaに収束する。よって(2)が成立する。
(2)⟹(3)
極大フィルターは真フィルターなので(2)からこれより細かい収束する真フィルターが存在するが、極大性よりそれはもとの極大フィルター一致しなければならず、最初に与えた極大フィルターは収束する。
((3)⟹(1))
ℱを閉集合からなる有限交叉族とし、これから生成される真フィルターを𝔉とする。このとき𝔉を含む極大フィルター𝔊が存在し、(3)より𝔊は収束する。このとき

⋂ℱ⊃⋂F∈𝔉F¯⊃⋂G∈𝔊G¯∋a

なので⋂ℱ≠ØよってXはコンパクト ∎

この定理18を用いてチコノフの定理を証明する。

定理 19 (チコノフの定理).

コンパクト空間の族{Xλ}λ∈Λの直積∏λ∈ΛXλはコンパクト

証明.

∏λ∈ΛXλの極大フィルターを任意に与えそれを𝔉とする。このとき定理12から各λについてπλ⁢[𝔉]はXλの極大フィルターである。各Xλはコンパクトなのでπλ⁢[𝔉]は収束する。収束点の一つをλ毎に選んでaλとおく。aλの任意の開近傍をNとするとπλ⁢[𝔉]がAλに収束してることから

∃F∈𝔉⁢πλ⁢(F)⊂N

となる。よってこのFについて

F⊂πλ−1⁢(N)

となる。πλ−1⁢(O)⁢(O∈𝔒λ)の形の開集合が∏λ∈ΛXλの準開基となっているので結局

lim𝔉=(aλ)λ∈Λ

よって𝔉は収束しその任意性から∏λ∈ΛXλはコンパクトである。 ∎

References

  • [1] ニコラ・ブルバキ,数学原論 位相1
  • [2] 柴田敏男,集合と位相空間,共立数学講座8,共立出版,1978