フィルターとコンパクト性
定義 1 (フィルター).
集合の部分集合族が上のフィルターであるとは
| (1) | |||
| (2) | |||
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を充たすことを言う。さらにフィルターが
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を充たすとき、そのフィルターを真フィルター111真はチェンジ!!とは読まないだとか固有フィルターと言う。
の条件はフィルターがの部分集合全体にはならないための条件である。その場合を省くのは、つまらないからである。またこのとの条件から真フィルターの元は有限交叉性、つまり真フィルターの有限個の交わりは空にならないのである。また上のフィルター全体の集合を
で表すことにする。
このフィルターと言う命名はカメラのレンズの”絞り”から来ているらしい。本当なのかどうかは疑わしいが、段々とと小さくなっていく感覚を表していると思われる。 条件よりフィルターの何かしらの元を包含するような集合はそのフィルターの元になってしまうのである。フィルターの元は包含関係に関して小さいモノの方が本質的なのである。その本質的な部分を抜き出したのがフィルター基の概念である。
定義 2 (フィルター基).
集合の部分集合族が上のフィルター基底であるとは
| (1) | |||
| (2) |
が成立する事を言う。さらにフィルター基底が
| (3) |
うを充たすとき真フィルター基底と呼ぶ。 フィルター基底 を用いて
とするとはフィルターとなる。これをから生成されたフィルターという。条件はから生成されるフィルターが真フィルターになるための条件である。
フィルター基以外にもフィルターを生成する方法はある。つまりそれは只の集合族から生成されるフィルターである。しかしそれが真フィルターを定めるかどうかは分からない。真フィルターは有限交叉性を持つので最低限その集合族の有限交叉性は仮定しなければならぬ。つまり次の定理が成り立つ。
定理 3.
を充たすとする。このような族を有限交叉族という。このときような集合全体である。要するに
がフィルター基となることを行っているのである。
証明略.
∎
有限交叉族という言葉は今後断りなく自在に用いる。
以フィルターの例を挙げる。
例 4 (近傍フィルター).
位相空間の点の近傍形全体は真フィルターとなっている。これは近傍系の性質より明らかである。
例 5 (切片フィルター).
集合の部分集合について
はフィルターとなる。これは有限交叉族から生成されるフィルターである。このフィルターをを切片とするフィルターと言う。である限り、切片フィルターは真フィルターである。
定義 6 (フィルターの細粗).
2つのフィルターが
となっているときはより粗い。または、はより細かいと言う。
詳しくは説明しないが、より細かいフィルターは点列で言うところの部分列に対応している。
定義 7 (像フィルター).
写像とが与えられたときより
はフィルター基底となるがこれから生成されるフィルターをのによる像フィルターと言い象徴的な記号
で表す。
定義 8 (フィルターの結び).
222双対的にフィルターの交わりが定義されるが、特にこの文書で用いないので定義しない。定義はともかく結果的には となる。に包含関係で順序を入れて順序集合と見た時(つまりフィルターの細粗という順序関係で見たとき)の二元集合の最小上界、つまりをとの結びといい
と書く。さて 2つの真フィルターが
を充たすとき
はフィルター基底となるが、これから生成される真フィルターはとなる。この条件が充たされないとき、
となる。当たり前だがはとの両方より細かい。
定義 9 (極大フィルター).
真フィルターが極大フィルターであるとは
となること。
注意.
極大フィルターは必ず真フィルターであると定める。を考えても仕方ないからである。
定理 10.
真フィルターについて以下は同値。
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| (2) | |||
| (3) | |||
| (4) |
の順に証明する。
証明.
を充たすを任意に与える。するとは有限交差族になっており、真フィルター生成する。そのフィルターを
と置くと条件からでではフィルターとなっている。よっての極大性からよって特に
任意のについて
が成り立つことが言えればからはすぐに従う。さてもしこれが成り立たないとすると
が成り立つが、このようなを一組固定すると
となるがとなり、これはが真フィルターであることに反する。
の対偶を示す。
とするとから
なので
となり、が真フィルターであることからつまり
が示されたのでが成り立つ。
から明らか。
真フィルターがを充たしフィルターとの間に
の関係があるとしよう。このときとなるが存在するががを満たしているので
よってがなりたち結局
なので。よっては極大フィルターである。 ∎
定理 11 (極大フィルターの補題).
上の真フィルターを任意に与えるとそれより細かい上の極大フィルターが存在する。
証明.
Zornの補題を用いる。真フィルターを任意に与えとし
と置くとを含む 極大フィルターはの極大元になってることに注意しよう。さてなのでは空ではない。そしての線型部分順序集合を任意に与えとする時を示そう。まず
はすぐわかる。そして
とすると、となるが存在し、はフィルターなのでから
を得る。
次に
とするととなるが存在する。は線型順序集合なのでとの間に大小関係があるがとしても一般性を失わない。このときなので
よって
の任意の元はを含んでいないので
以上よりは真フィルターであり、なのでよってには上界が存在するのでZornの補題から極大元を持つ。それが求める極大フィルターである。 ∎
注意.
よくこの命題を極大フィルターが存在するなどと手短に言うが、それは厳密には誤りである。なぜなら1点の切片フィルターは極大フィルターなので、極大フィルターは必ず存在するからである。真フィルターを与えたときにそれより細かい極大フィルターが存在する事が大事である。
定理 12.
極大フィルターの像フィルターは極大である。
証明.
の極大フィルターをとしによる像フィルターを考える。 を任意に与えるとが極大フィルターであることから
が成り立つ。ならばであり、ならば なのでよってここでを用いた。以上から任意のについて
なのでは極大フィルターである。 ∎
定義 13 (フィルターの収束).
位相空間上のフィルターがの点に収束するとは
が成り立つこと。ここではの近傍フィルターである。
定義 14 (フィルターの接触点).
位相空間上のフィルターの接触点とは
に属する点のことである。
以下の命題からわかるようにフィルターの接触点とはそのフィルターが収束する「可能性」のある点である。
命題 15.
位相空間上の真フィルターがとなるなら、はの接触点である。 逆にがの接触点ならより細かい真フィルターが存在してとなる。
証明.
前半はが真フィルターであることと
から明らかである。後半は
と置けば良い。 ∎
フィルターとコンパクト性の特徴付け
定義 16 (コンパクト空間).
位相空間がコンパクトであるとはの任意の開被覆に有限部分被覆が存在すること
命題 17.
(がコンパクト(の閉集合からなる任意の集合族が有限交叉族ならば)
証明.
の閉集合からなる集合族が
を満たすと仮定する。そして
と定義するとこの集合族の元は開集合でよりとなる、つまりはの開被覆である。いまはコンパクトであったからの有限部分被覆
を持つよりとなり、
なので、結局、の有限部分族で交叉が空となるものが存在する。つまりがコンパクトなら
(の閉集合からなる任意の集合族が有限交叉族ならば)の対偶が成り立つということになるので定理のが示された。
をの開被覆とする。このとき
と置くととなる。ので(の閉集合からなる任意の集合族が有限交叉族ならば)の対偶からの有限部分族
が存在してとなる。そこで
と置けばこれはの有限部分族でを充たす。つまりはコンパクト。 ∎
以下この命題17を自在に断りなく用いる。
定理 18 (コンパクト性とフィルター).
以下は同値
| (1) | |||
| (2) | |||
| (3) |
証明.
の順に示す。
上の真フィルターをとする。は真フィルターなので特に有限交叉族であり、故に
は有限交叉族であるからコンパクト性から
ここから点を適当にとると、は各の触点になってるからの近傍フィルターは
を充たし、が定義できてこれはより細かくより細かいのでに収束する。よってが成立する。
極大フィルターは真フィルターなのでからこれより細かい収束する真フィルターが存在するが、極大性よりそれはもとの極大フィルター一致しなければならず、最初に与えた極大フィルターは収束する。
を閉集合からなる有限交叉族とし、これから生成される真フィルターをとする。このときを含む極大フィルターが存在し、よりは収束する。このとき
なのでよってはコンパクト ∎
この定理18を用いてチコノフの定理を証明する。
定理 19 (チコノフの定理).
コンパクト空間の族の直積はコンパクト
証明.
の極大フィルターを任意に与えそれをとする。このとき定理12から各についてはの極大フィルターである。各はコンパクトなのでは収束する。収束点の一つを毎に選んでとおく。の任意の開近傍をとするとがに収束してることから
となる。よってこのについて
となる。の形の開集合がの準開基となっているので結局
よっては収束しその任意性からはコンパクトである。 ∎
References
- [1] ニコラ・ブルバキ,数学原論 位相1
- [2] 柴田敏男,集合と位相空間,共立数学講座8,共立出版,1978