積分核と多項式近似
電波通信
HTML変換日:2026年7月26日
この文書ではワイエルストラスの多項式近似定理を積分核を用いた方法で証明する。
注意 (円周上の連続関数).
の区間の端点を同一視した空間と円周は位相同型である。この同型を根拠に上の実数値連続関数と上の実数値連続関数でとなる関数を同一視する。また、上で行うべき積分を閉区間上の積分として処理する。
以下の文章ではとやらやらがこの方法によって同一視される。
定義 1 (円周上もしくは直線上の関数の畳込み).
のとを同一視して得られる円周上の関数に対して畳み込みを
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と定義する。の値によってははからはみ出してしまいの意味が不明瞭だが、これはをまで周期的に拡張した関数として考え積分するのである。
上の連続関数に対してその畳込みを
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と定義する。性質の良い関数を選ばなければこの関数はwell-defindではないことに注意しよう。しかし後にこの畳込みを用いるときには都合の良い関数しか扱わないし、その時にちゃんと注意するので心配の必要はない。
注意.
連続関数について畳み込みが定義されるとき、
となる。
次に良い核を定義しよう。”良い核”という単語で一つの固有名詞である。
定義 2 (直線上もしくは円周上の良い核).
円周上の関数列がに台を持つ良い核であるとは
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を充たすことである。
上と同様に直線上の関数列がに台を持つ良い核であるとは
| (1) |
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| (2) |
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| (3) |
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を充たすことである。
定理 3 (良い核と関数の近似).
を円周上のを台にもつ良い核とし、を円周上の連続関数として
と置くこのとき
が成り立つ。
を直線上のを台にもつ良い核とし、を直線上のがコンパクトな連続関数とすると
と定義するとこの畳込みはwell-definedで
が成り立つ。
証明.
(円周上について)
まずと定義し任意の正の数について、コンパクト空間上の連続関数は一様連続だからが存在して
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となる。ここでを十分小さくとりと仮定できる。
更にを十分大きく取り
と出来る。
そしてより任意のに対して
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ここで最後の式の初項について一様連続性から
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第二項について
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よって
はに依存しないので結局
なのでよって
(直線上について)のコンパクト性から畳込みがwell-defined であることはすぐわかるし、がコンパクトであることからの一様連続性がわかるので円周上の場合と同様である。
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しかし以降の文章では台がとなる核しか出てこない。また、パラメータが自然数ではなく実数での時に連続関数を近似したり、パラメータがでのときに連続関数を近似したりするものが出てくるが、証明は同様である。
定義 4.
に対して
に注意して
と定義しこれをワイエルストラス核と呼ぶ。定義域はとする。
定義 5.
とし、
と定義する。これをランダウ核と呼ぶ。定義域は
定義 6.
とし、
を核と呼ぶことにする。定義域は
定義 7.
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をフェイエル核という。定義域は
定義 8.
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をポアソン核という。定義域は
補題 9.
とするとき
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が成立する。
証明.
1番の式は
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からわかる。残りは等比級数の総和公式を使えばわかる。
注意.
も良い核になりそうだが、これは良い核にはならない。このことを補うためにフーリエ級数論ではフェイエル核やポアソン核を用いる。
証明.
まず最初に上で述べた核は全て正なので良い核の条件2は条件1を示せば直ちに従うことに注意しよう。
(ワイエルストラス核について)
なので
は明らかであるので条件1,及び条件2を充たす。そして
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で
とが偶関数であることから
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がわかる。
(ランダウ核について)定義から明らかに
であるので条件1,2を充たす。またが偶関数でのときより
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よって
そして
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でよりなので条件3がわかる。
(核について)
は定義より明らか。後半は所謂ウォリスの公式を導出する議論を用いる。
とした時、
が成り立つ。このことは高校生程度の知識があれば容易にわかると思う。さてこの式とから帰納的に次の事がわかる。
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つまり
よってより
故に
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なので条件3が成立することがわかる。
(フェイエル核について)補題9より
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なので条件1(ついでに2も)満たされる。
条件3について
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より
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から後はわかる。
(ポアソン核について)
補題9より
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なので条件1(ついでに条件2も)満たされる。
条件3について
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より
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なのでのとき右辺はへ近づく
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事実 11.
解析関数のテイラー展開は収束円板の中で広義一様収束する。
補題 12.
を多項式としを連続関数とすると畳み込み
はの多項式である。ただしは円周か直線でこれが直線の場合にははコンパクト台を持つとする。
さていよいよワイエルストラスの多項式近似定理を証明する。定理3をが決め手である。
定理 13 (ワイエルストラスの多項式近似定理).
有界閉区間上の連続関数は多項式で一様に近似出来る。
証明の前に注意
直線上の核を使う場合:有界閉区間上の連続関数を任意に与えるとこの関数をの外ではとなるように上の連続関数に拡張出来る。よって直線上のコンパクト台関数を多項式で一様に近似できれば多項式近似定理は証明される。
円周上の核を使う場合:有界閉区間上の連続関数を任意に与える。有界閉区間は1次関数によって他の有界閉区間に対してとなるように出来る。これによってを(は十分小さい)の外ではとなるようにへ拡張できる。更に多項式と1次関数の合成は多項式なので円周上の連続関数を多項式で一様に近似できれば多項式近似定理は証明される。
証明:ワイエルストラス核の場合.
指数関数の次までのテイラー展開をと置くとこれは多項式で指数関数に広義一様収束する。とする。任意にを与えを十分大きく取ればについて定理3から
と出来る。として
と置くとこれはコンパクトでを十分大きくとり
と出来るこのときは多項式でのとき
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ここでは定数なのでは多項式で近似できる。よって定理は証明された。
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証明:ランダウ核の場合.
補題12からと連続関数との畳込みは多項式なので定理3からすぐに結論を得る。またランダウ核の形から、連続関数を近似する多項式はのそれを構成する単項式の次数が偶数となるものを選べることがわかる。(特にこのことを何かに使うわけではないが)
証明:核の場合.
の形からすぐにわかるようにと連続関数との畳込みは
の形の関数の幾つかの線形結合となる。これらの関数は解析的である。(解析関数の積は解析的)よって事実11から結論が知れる。(三角関数の収束半径は)
証明:フェルエル核の場合.
フェイエル核と連続関数との畳込みは三角多項式となる。三角多項式は解析的なので結論がわかる。
証明:ポアソン核の場合.
ポアソン核と連続関数との畳込みは三角多項式の一様収束極限関数であるからフェイエル核の場合と同様に結論が知れる。
補足
命題 14.
有界閉区間上の連続関数を任意に与えるとこの関数をの外ではとなるように上の連続関数に拡張出来る。
証明.
とを通る1次関数ととを通る1次関数をに繋げば良い。
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円周の場合の拡張についてもほとんど同様。
省略した補題9の証明
証明.
等比級数の総和公式しか使わない。計算が長いだけである。
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から第二式がわかる。ここで等比級数の総和公式を使った。
また
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より
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から第三式がわかる。
そして
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から第四式がわかる。
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References
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[1]
伊藤清三,ルベーグ積分入門,数学選書4,裳華房,1963
-
[2]
エアリス・M・スタイン、ラミ・シャカルチ著、新井仁之・杉本充・高木啓行・千原浩之訳、フーリエ解析(プリンストン解析学講義),日本評論社,2007
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[3]
黒田成俊,関数解析,共立数学講座15,共立出版,1980