AUTOMATIC HTML VERSION

始位相についてのLaTeXML自動変換版です。自動検査には合格していますが、元PDFとの目視比較は未実施です。正本はPDF・TeXです。

始位相

電波通信
HTML変換日:2026年7月26日

この文書では始位相とその性質について紹介する。強く紹介したいのは定理6である。この定理は筆者が位相空間論を初めて楽しく感じた定理である。始位相とはInitial topologyを訳したものだが逆位相とも呼ばれる。

定義 1 (始位相).

Xを集合{(Yλ,𝔒λ)}λΛを位相空間の族とし、各λ 毎に写像

fλ:XYλ

が与えられているとするこの時Xに写像族F={fλ}λΛをすべて連続にするような最弱の位相が存在する。それをF={fλ}λΛから誘導された始位相と呼ぶ。此処では記号(F)で表すことにする。この位相は準開基𝔐={fλ1(U)|U𝔒λ,λΛ}により生成されている

Iのフラクトゥールである。

例 2 (直積位相).

位相空間の族{(Xλ,𝔒λ)}λΛの直積空間λΛXλの位相はその射影の族{πλ}λΛから定まる始位相である。

例 3 (相対位相).

相対位相は包含写像から定まる始位相である。

例 4 (シェルピンスキー空間と位相空間).

シェルピンスキー空間とは集合2={0,1}

{Ø,{1},{0,1}}

を開集合族として位相を定義した空間である。(X,𝔒)を任意の位相空間とするとこの位相は𝔒によって添字付けられた開集合の特性関数の関数の族

χU:X{0,1}

によって定まる始位相である。より強く(X,𝔒)の開基の一つを𝔅とするとこの空間の位相はシェルピンスキー空間への連続写像の族{χB}B𝔅から定まる始位相である。証明は容易であろう。この事実は後で使う。

定理 5 (始位相の普遍性).

位相空間Yには{fλ}λΛから定まる始位相が入っているとしこの関数族の終域を{Zλ}λΛとするこの時位相空間XからのYへの写像ϕについて

ϕ:XYλΛfλϕ:XZλ

が成立する。

証明.

[]の部分は明らかである。[]を証明しよう。Xの位相は準開基𝔐={fλ1(U)|U𝔒λ,λΛ}により生成されていることを思い出そう。すると任意のλと任意のU𝔒λに対して

ϕ1(fλ1(U))=(fλϕ)1(U)

が開集合であることを示せば良いが、それは

λΛfλϕ:XZλ

であることから直ちに分かる。 ∎

定理 6 (始位相の埋め込み定理).

位相空間(X,𝔒)には{fλ}λΛから定まる始位相が入っているとしこの関数族の終域を{(Yλ,𝔒λ)}λΛとするこのとき関数

ϕ=λΛfλ:XλΛYλΛ

について(F)=(ϕ)が成立する。 またϕが単射ならばこれは埋め込みになっているつまり(X,𝔒)λΛYλΛの部分空間ϕ(X)と同相となる。

証明.

[前半]始位相の普遍性(直積位相n普遍性を用いる)からϕ(X,(F))ϕは連続なので最小性から

(ϕ)(F)

そしてπλϕ=Fλなのでfλはに(X,(ϕ))上で連続なので始位相の最小性から

(F)(ϕ)

よって(F)=(ϕ)が成り立つ。
[後半]後半はXの位相が準開基 𝔐={fλ1(U)|U𝔒λ,λΛ} により生成されていることと今はϕが単射であるからϕの直像は交わりを保つ。よってϕ(fλ1(U))ϕ(X)の開集合であることを示せばいい。此処でfλ=πλϕを用いると

fλ1(U)=ϕ1(π1(U))

と書くことができ、ϕの単射性を用いて

ϕ(fλ1(U))=ϕ(ϕ1(π1(U)))=π1(U)ϕ(X)

を得て、直積位相と相対位相の定義からπ1(U)ϕ(X)ϕ(X)の開集合である。これで証明が終わる。 ∎

例 7 (T0空間).

T0空間はシェルピンスキー空間の直積に埋め込み可能である。これは開基𝔅

U𝔅χU(X,𝔒)T0

が成立するからである。

[U𝔅χU(X,𝔒)T0]の証明.
まずT0とは
(T0)  異なる2点x,yについてxの近傍でyを含まないようなものが存在するか、もしくはyの近傍でxを含まないようなものが存在する
であることを思い出そう。この定義の「近傍」を開基𝔅の元としても良い。(開基なので)
今、nyと仮定するとT0から(xyを適宜入れ替えて)B𝔅が存在してxB,yBとしても一般性を失わない。このとき

χB(x)=1,χB(y)=0

なので

U𝔅χU(x)U𝔅χU(y)

よって

xyU𝔅χU(x)U𝔅χU(y)

なのでU𝔅χUは単射。逆はこの証明を下から読めばわかる。

定義 8 (位相空間の重み).

位相空間Xの開基の最小濃度を位相空間Xの重みと言い、w(X)で表す。つまり

w(X)=min{card(𝔅)|𝔅X}

である。

この位相空間の重みを用いて、位相空間それ自体の濃度が評価出来る。

系 9.

T0空間に対して

card(X)2w(X)
証明.

Xはシェルピンスキー空間の直積U𝔅{0,1}に埋め込まれ、

card(U𝔅{0,1})=2card(𝔅)

となるので、𝔅card(𝔅)=w(X)となるものとして選べば

card(X)2w(X)

が成り立つ。 ∎

直ちに次のことがわかる。

系 10.

第二可算公理を充たすT0空間にたいして

card(X)𝔠

References

  • [1] 森田紀一,位相空間論,岩波全書331,岩波書店1981
  • [2] M.G.Murdeshwar,general topology,Wiley Eastern Limited,1983