始位相
この文書では始位相とその性質について紹介する。強く紹介したいのは定理6である。この定理は筆者が位相空間論を初めて楽しく感じた定理である。始位相とはInitial topologyを訳したものだが逆位相とも呼ばれる。
定義 1 (始位相).
を集合を位相空間の族とし、各 毎に写像
が与えられているとするこの時に写像族をすべて連続にするような最弱の位相が存在する。それをから誘導された始位相と呼ぶ。此処では記号で表すことにする。この位相は準開基により生成されている
はのフラクトゥールである。
例 2 (直積位相).
位相空間の族の直積空間の位相はその射影の族から定まる始位相である。
例 3 (相対位相).
相対位相は包含写像から定まる始位相である。
例 4 (シェルピンスキー空間と位相空間).
シェルピンスキー空間とは集合に
を開集合族として位相を定義した空間である。を任意の位相空間とするとこの位相はによって添字付けられた開集合の特性関数の関数の族
によって定まる始位相である。より強くの開基の一つをとするとこの空間の位相はシェルピンスキー空間への連続写像の族から定まる始位相である。証明は容易であろう。この事実は後で使う。
定理 5 (始位相の普遍性).
位相空間にはから定まる始位相が入っているとしこの関数族の終域をとするこの時位相空間からのへの写像について
が成立する。
証明.
の部分は明らかである。を証明しよう。の位相は準開基により生成されていることを思い出そう。すると任意のと任意のに対して
が開集合であることを示せば良いが、それは
であることから直ちに分かる。 ∎
定理 6 (始位相の埋め込み定理).
位相空間にはから定まる始位相が入っているとしこの関数族の終域をとするこのとき関数
についてが成立する。 またが単射ならばこれは埋め込みになっているつまりはの部分空間と同相となる。
証明.
[前半]始位相の普遍性(直積位相n普遍性を用いる)からは上は連続なので最小性から
そしてなのではに上で連続なので始位相の最小性から
よってが成り立つ。
[後半]後半はの位相が準開基
により生成されていることと今はが単射であるからの直像は交わりを保つ。よってがの開集合であることを示せばいい。此処でを用いると
と書くことができ、の単射性を用いて
を得て、直積位相と相対位相の定義からはの開集合である。これで証明が終わる。 ∎
例 7 (空間).
空間はシェルピンスキー空間の直積に埋め込み可能である。これは開基
が成立するからである。
[]の証明.
まずとは
異なる2点についての近傍でを含まないようなものが存在するか、もしくはの近傍でを含まないようなものが存在する
であることを思い出そう。この定義の「近傍」を開基の元としても良い。(開基なので)
今、と仮定するとから(とを適宜入れ替えて)が存在してとしても一般性を失わない。このとき
なので
よって
なのでは単射。逆はこの証明を下から読めばわかる。
定義 8 (位相空間の重み).
位相空間の開基の最小濃度を位相空間の重みと言い、で表す。つまり
である。
この位相空間の重みを用いて、位相空間それ自体の濃度が評価出来る。
系 9.
空間に対して
証明.
はシェルピンスキー空間の直積に埋め込まれ、
となるので、をとなるものとして選べば
が成り立つ。 ∎
直ちに次のことがわかる。
系 10.
第二可算公理を充たす空間にたいして
References
- [1] 森田紀一,位相空間論,岩波全書331,岩波書店1981
- [2] M.G.Murdeshwar,general topology,Wiley Eastern Limited,1983