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ウリゾーンの定理の証明

ナンブキトラ
HTML変換日:2026年7月26日

この文章ではウリゾーンの補題を証明する。ウリゾーンの補題は抽象的な正規空間の上にある種の実連続関数の存在を示した定理であり、補題とは言うものの、これは大定理である。証明は[2]に倣って上半連続と下半連続の概念を用いるものを採用した。この方法が証明が簡単になると思ったからである。等高線を次々作っていくというのが証明のアイディアである。またこの文章に於いて正規性という言葉にはT1を仮定しない意味で用いる。[1]と異なるので注意せよ。また[1]では余分にT1を仮定してウリゾーンの補題を証明しているが、証明をよく読めばT1を仮定しない意味での正規空間でウリゾーンの補題は成り立つ。

定義 1.

位相空間Xが正規であるとは交わらない二つの閉集合の任意の組F,Gに対して開集合U,Vが存在して

F⊂U,G⊂V,U∩V=∅

を充たすことである。

補題 2.

位相空間が正規であることと 任意の閉集合Fと開集合UについてF⊂Uならばある開集合Oが存在し

F⊂O⊂O¯⊂U

となることは同値である。つまり任意の閉集合の閉近傍全体は基本近傍系を成しているということである。

簡単な補題なので証明は省略する。また以下ではこの補題を明示せず、「正規性から」とだけ断って自在に用いる。

定義 3 (上半連続、下半連続).

位相空間(X,𝔒)に対しその閉集合族を𝔉と書こう。このとき写像

f:X→[a,b]

が上半連続とは

∀u∈[a,b]⁢f−1⁢([u,b])∈𝔉

また、fが下半連続とは

∀l∈[a,b]⁢f−1⁢([a,l])∈𝔉

と定義する。

明らかに上かつ下半連続な関数は連続であり、連続な関数は上かつ下半連続である。もちろん[a,b]には標準的な位相を入れてその意味で連続と言っているのである。

補題 4.

F,Uをそれぞれ位相空間(X,𝔒)の閉集合、開集合とする。 この時、特性関数

χF,χU:X→[0,1]

はそれぞれ上半連続、下半連続である。

特性関数は0か1しか値を取らないので証明は簡単である。

定理 5 (半連続関数の上限と下限).

{fλ}λ∈Λを上半連続(下半連続)な写像の族とする。この時infλ∈Λfλ(supλ∈Λfλ)も上半連続(下半連続)

証明.

任意のxについて

infλ∈Λfλ⁢(x)≥u⇔∀λ∈Λ⁢fλ⁢(x)≥u

なので

(infλ∈Λfλ)−1⁢([u,b])=⋂λ∈Λfλ−1⁢([u,b])

となり、(infλ∈Λfλ)−1⁢([u,b])が閉集合であることがわかるので infλ∈Λfλが上半連続であることがわかる。下半連続の場合も同様。 ∎

補題 6.

(X,𝔒)を正規空間とする。この時 D={m2n|n∈ℕ,m=0,1,⋯⁢2n}として、この時Dを添え字とする(X,𝔒)の開集合の族{Vd}r∈Dが存在して

a<b⇒V¯a⊂Vb

を充たす。

証明.

まずG⊂X\Fと正規生から

G⊂O⊂O¯⊂X\F

となるOが存在する。この開集合のひとつOとX\FをそれぞれV1,V0とする。
そして再び正規性を用いて

V0¯⊂P⊂P¯⊂V1

となるOもひとつをV1/2として採用する。
さらにV1/4,V3/4を正規性から存在が保証される

V0¯⊂A⊂A¯⊂V1/2

となるAのひとつをV1/4と定義し、

V1/2¯⊂B⊂B¯⊂V1

となるBのひとつをV3/4として定義する。・・・ということを繰り返し開集合の族{Vd}d∈Dが出来あがる。

これで十分な人は早速ウリゾーンの補題の証明を読めば良いが、より正確には Dk={m2n| 0≤n≤k,m=0,1,⋯⁢2n}対する帰納法と選択公理を用いる。上で述べた方法を細かく正当化するだけだが、一応せっかくなので証明を付ける。それに当たり次の形の選択公理を使おう。
選択公理: 非空な集合を要素に持つ空でない集合族{Xλ}λ∈Λに対し、あるC⊂⋃λ∈ΛXλが存在して

∀λ∈Λ⁢(C∩Xλ⁢は⁢一⁢元⁢集⁢合)

を充たす。
 
さて、𝔖⁢=⁢{(A,B)|A,B∈𝔒,A¯⊂B}と定義し、(A,B)∈𝔖に対し、 𝔄⁢(A,B)={C∈𝔒|A¯⊂C⊂B}と定義すると正規性から𝔄⁢(A,B)≠∅そして集合族 {𝔄⁢(A,B)}(A,B)∈𝔖に対し選択公理を用いて、先の選択の条件を満たす集合Cを得る。簡単のため𝔄⁢(A,B)∩C={C⁢(A,B)}と書くことにする。このCを用いて

a,b∈Dk,a<b⇒V¯a⊂Vb

を充たす{Vd}d∈Dkを帰納的に構成していく。
k=0の時、D0={0,1}であるが、これに対して正規性から G⊂O⊂O¯⊂X\FとなるOが存在するのでこのような開集合のひとつOをV1と定義し、V0=X\Fとする。この時もちろん

a,b∈D0⁢a<b⇒V¯a⊂Vb

が成り立つ
そして

a,b∈Dk,a<b⇒V¯a⊂Vb

を充たす{Vd}d∈Dkがk=nまで 定義されとしてk=n+1に対して構成する。 Dn+1\Dnの元は2⁢m+12n+1の形をしているので

V2⁢m+12n+1=C⁢(Vm2n,Vm+12n)

とし、d∈Dnに対してはVdが既に定義されているのでこれをそのまま用いて、任意のd∈Dn+1に対してVdが定義され

a,b∈Dn+1,a<b⇒V¯a⊂Vb

を充たす。 このようにして任意のnに対し {Vd}d∈Dnが定義され{Vr}r∈Dn⊂{Vr}r∈Dn+1を充たす。 D=⋃n∈ℕDnなので、これにより{Vd}d∈Dが定義され

a,b∈D,a<b⇒V¯a⊂Vb

を充たす。 ∎

上に登場する集合Dは[0,1]で稠密であることに注意せよ。
準備が整ったのでウリゾーンの補題の証明に入ろう。

定理 7 (ウリゾーンの補題).

(X,𝔒)を正規空間とし、F,Gをその互いに素な2つの閉集合とすると連続関数f:X→[0,1]が存在し

f|F=1,f|G=0

つまり互いに素な2つの閉集合は関数で分離できる。

証明.


Dを添え字とする二つの集合族{fd}d∈D,{gd}d∈Dを

fd={dx∈Vd1x∈X\Vdgd={dx∈X\V¯d0x∈V¯d

と定義すると0≤d≤1を踏まえて補題4と同様に各fdは上半連続、各gdは下半連続となる。そして写像

f,g:X→[0,1]

を

f:=infd∈Dfd
g:=supd∈Dgd

と定義すれば定理よりfは上半連続、gは下半連続となる。さて

主張.
x∈Vr⇒f⁢(x)≤r (1)
x∉Vs⇒s≤f⁢(x) (2)
x∉V¯r⇒r≤g⁢(x) (3)
x∈V¯s⇒g⁢(x)≤s (4)

が成り立つ。

証明.


(1)について、x∈Vrならfr⁢(x)=rなのでfの定義から明らかにf⁢(x)≤rが成り立つ。
(2)について、{Vd}d∈Dの性質

a,b∈D,a<b⇒V¯a⊂Vb

よりx∉Vsを仮定する時

a≤s,a∈D⇒x∉Va

となる。つまり

∀a≤s⁢fa⁢(x)=1

が成り立つ。ところで逆にs<dとなるdについては定義から明らかに

∀d>sfd⁢(x)≥s

が成り立ち、いづれにせよ結局

∀d∈D⁢s≤fd⁢(x)

よってfの定義からs≤f⁢(x)を得る。
(3)について、x∉V¯rならばgr⁢(x)=rなのでgの定義から明らかにr≤g⁢(x)
(4)について、{Vd}d∈Dの性質

a,b∈D,a<b⇒V¯a⊂Vb

よりx∈V¯sを仮定する時

s≤a,a∈D⇒x∈V¯a

となる。つまり

∀s≤a⁢ga⁢(x)=0

が成り立つ。ところで逆にd<sとなるdについてはgdの定義から明らかに

∀d<s⁢gd⁢(x)≤s

が成り立ち、いづれにせよ結局

∀d∈D⁢gd⁢(x)≤s

よってgの定義からg⁢(x)≤sを得る。

∎

上の主張に対して対偶をとり

r<f⁢(x)⇒x∉Vr (5)
f⁢(x)<s⇒x∈Vs (6)
g⁢(x)<r⇒x∈V¯r (7)
s<g⁢(x)⇒x∉V¯s (8)

を得る。これを使ってf=gを示そう。
もしある点xでf⁢(x)<g⁢(x)ならDが[0,1]で稠密なことから

f⁢(x)<s<g⁢(x)

となるs∈Dが存在し上の(6)と(8)からx∈Vsかつx∉V¯sが成り立ってしまい矛盾。
もしある点xでg⁢(x)<f⁢(x)ならDが[0,1]で稠密なことから

g⁢(x)<r<s<f⁢(x)

となるr,s∈Dが存在し上の(5)とs<f⁢(x)からx∉Vsを得て、(7)とg⁢(x)<rから x∈V¯rを得るが、V¯r⊂Vsなので矛盾。
以上の議論から任意の点x∈Xでf⁢(x)=g⁢(x)、つまりf=gよってf(=g)はXで上半連続かつ下半連続なのでXで連続であり、また、

∀d∈D⁢G⊂V¯d

fが成立することとgdの定義から

∀d∈D⁢x∈G⇒gd⁢(x)=0

よって

g|G=f|G=0

となる。そして

∀d∈D⁢F⊂X\Vd

が成立することとfdの定義から

∀d∈D⁢x∈F⇒fd⁢(x)=1

なので

f|F=g|F=1

となる。以上から

f|G=0⁢f|F=1

となり、欲しかった関数が得られた。 ∎

References

  • [1] 松坂和夫,集合・位相入門,岩波書店,1968
  • [2] W.Rudin,Real and Complex Analysis second edition,McGraw-Hill, 1974