ウリゾーンの定理の証明
この文章ではウリゾーンの補題を証明する。ウリゾーンの補題は抽象的な正規空間の上にある種の実連続関数の存在を示した定理であり、補題とは言うものの、これは大定理である。証明は[2]に倣って上半連続と下半連続の概念を用いるものを採用した。この方法が証明が簡単になると思ったからである。等高線を次々作っていくというのが証明のアイディアである。またこの文章に於いて正規性という言葉にはを仮定しない意味で用いる。[1]と異なるので注意せよ。また[1]では余分にを仮定してウリゾーンの補題を証明しているが、証明をよく読めばを仮定しない意味での正規空間でウリゾーンの補題は成り立つ。
定義 1.
位相空間が正規であるとは交わらない二つの閉集合の任意の組に対して開集合が存在して
を充たすことである。
補題 2.
位相空間が正規であることと 任意の閉集合と開集合についてならばある開集合Oが存在し
となることは同値である。つまり任意の閉集合の閉近傍全体は基本近傍系を成しているということである。
簡単な補題なので証明は省略する。また以下ではこの補題を明示せず、「正規性から」とだけ断って自在に用いる。
定義 3 (上半連続、下半連続).
位相空間に対しその閉集合族をと書こう。このとき写像
が上半連続とは
また、が下半連続とは
と定義する。
明らかに上かつ下半連続な関数は連続であり、連続な関数は上かつ下半連続である。もちろんには標準的な位相を入れてその意味で連続と言っているのである。
補題 4.
,をそれぞれ位相空間の閉集合、開集合とする。 この時、特性関数
はそれぞれ上半連続、下半連続である。
特性関数はかしか値を取らないので証明は簡単である。
定理 5 (半連続関数の上限と下限).
を上半連続(下半連続)な写像の族とする。この時()も上半連続(下半連続)
証明.
任意のについて
なので
となり、が閉集合であることがわかるので が上半連続であることがわかる。下半連続の場合も同様。 ∎
補題 6.
を正規空間とする。この時 として、この時を添え字とするの開集合の族が存在して
を充たす。
証明.
まずと正規生から
となるが存在する。この開集合のひとつとをそれぞれとする。
そして再び正規性を用いて
となるもひとつをとして採用する。
さらにを正規性から存在が保証される
となるのひとつをと定義し、
となるのひとつをとして定義する。・・・ということを繰り返し開集合の族が出来あがる。
これで十分な人は早速ウリゾーンの補題の証明を読めば良いが、より正確には
対する帰納法と選択公理を用いる。上で述べた方法を細かく正当化するだけだが、一応せっかくなので証明を付ける。それに当たり次の形の選択公理を使おう。
選択公理:
非空な集合を要素に持つ空でない集合族に対し、あるが存在して
を充たす。
さて、と定義し、に対し、
と定義すると正規性からそして集合族
に対し選択公理を用いて、先の選択の条件を満たす集合を得る。簡単のためと書くことにする。このを用いて
を充たすを帰納的に構成していく。
の時、であるが、これに対して正規性から
となるが存在するのでこのような開集合のひとつをと定義し、とする。この時もちろん
が成り立つ
そして
を充たすがまで 定義されとしてに対して構成する。 の元はの形をしているので
とし、に対してはが既に定義されているのでこれをそのまま用いて、任意のに対してが定義され
を充たす。 このようにして任意のに対し が定義されを充たす。 なので、これによりが定義され
を充たす。 ∎
上に登場する集合はで稠密であることに注意せよ。
準備が整ったのでウリゾーンの補題の証明に入ろう。
定理 7 (ウリゾーンの補題).
を正規空間とし、をその互いに素な2つの閉集合とすると連続関数が存在し
つまり互いに素な2つの閉集合は関数で分離できる。
証明.
を添え字とする二つの集合族を
と定義するとを踏まえて補題4と同様に各は上半連続、各は下半連続となる。そして写像
を
と定義すれば定理よりは上半連続、は下半連続となる。さて
主張.
| (1) | |||
| (2) | |||
| (3) | |||
| (4) |
が成り立つ。
証明.
について、ならなのでの定義から明らかにが成り立つ。
について、の性質
よりを仮定する時
となる。つまり
が成り立つ。ところで逆にとなるについては定義から明らかに
が成り立ち、いづれにせよ結局
よっての定義からを得る。
について、ならばなのでの定義から明らかに
について、の性質
よりを仮定する時
となる。つまり
が成り立つ。ところで逆にとなるについてはの定義から明らかに
が成り立ち、いづれにせよ結局
よっての定義からを得る。
∎
上の主張に対して対偶をとり
| (5) | |||
| (6) | |||
| (7) | |||
| (8) |
を得る。これを使ってを示そう。
もしある点でならがで稠密なことから
となるが存在し上のとからかつが成り立ってしまい矛盾。
もしある点でならがで稠密なことから
となるが存在し上のとからを得て、とから
を得るが、なので矛盾。
以上の議論から任意の点で、つまりよってはで上半連続かつ下半連続なのでで連続であり、また、
fが成立することとの定義から
よって
となる。そして
が成立することとの定義から
なので
となる。以上から
となり、欲しかった関数が得られた。 ∎
References
- [1] 松坂和夫,集合・位相入門,岩波書店,1968
- [2] W.Rudin,Real and Complex Analysis second edition,McGraw-Hill, 1974